企業の技術力とCSOの「つながり」、相互連携で課題解決を

記事のポイント


  1. 企業が社会課題を解決する施策としてCSO(市民社会組織)との連携は重要だ
  2. 企業が持つ技術力や資金力とCSOのネットワークなどをつなげる
  3. 専門知識を得るので「グリーンウォッシュ」対策にも有効だ

企業として社会課題に向き合う必要性は日に日に高まっている。一方で、「グリーンウォッシュ」などの問題も指摘され、複雑な社会課題に一企業が向き合うことへの課題も露見している。企業が社会課題への取り組みを加速させるために、NPO、NGOなどのCSO(市民社会組織)との連携が重要だ。企業が持つ資金力や技術力とCSOの専門知識やネットワークなどをつなげる取り組みは社会課題解決への大きな力になる。(伊藤 恵=サステナビリティ・プランナー)

CSOの力は「グリーンウォッシュ」対策にも役立つ

CSO(市民社会組織)とは、世界の問題や社会課題に対して、政府や国際機関とは違う民間の立場で、国境や民族、宗教の壁を越え、利益を目的とせずに取り組む団体のことを指す。

NGO、NPO、市民団体など組織の形態はさまざまだ。特定の国や営利組織などから独立した存在であるため、中立性が保たれている。

社会課題の現場で活動してきた豊富な経験と知識に支えられた高い専門性も有している。このCSOの力は、社会課題解決を目指す企業にとっても必要不可欠であるといえる。

近年指摘されるようになった「グリーンウォッシュ」への対策にも役立つ。CSOの専門知識を活用すれば表示する内容が、科学的根拠に沿った正しいものかの判断もつく。活動の現場で、周辺住民など関係者と良好な関係を築く橋渡し役になることもできるのだ。

住友商事はNGOと連携して教育支援

企業とCSOはさまざまな形式で連携を取ることが可能だ。企業からCSOへの資金提供、物資提供などから、プロボノなど人を活かした支援もある。

住友商事の「100 SEED」では、世界各地の住友商事グループ社員がそれぞれの地域社会の教育課題の解決に取り組む社会貢献活動プログラムを実施している。

ダッカ事務所では、十分な教育を受ける機会のない子どもたちに良質な教育を届けるため、NGO団体「エクマットラ ソサエティ」と協働プロジェクトを実施する。子どもたちに教材とIT機器を寄贈した。

新型コロナウイルスの影響で休校となっていた期間、オンライン授業も開いた。社員8人が教師となり、4カ月間で15回の授業を実施した。

ダッカ事務所17人全員が力を合わせ、コロナ禍の厳しい状況の下でプロジェクトは成功を収めた。参加社員もプロジェクトを通して地域の発展に寄与することに意義を感じたという。

このような社員の力を生かした連携は、地域の社会課題を解決するだけではない。参加した社員もサステナビリティ意識の向上など、企業が活動を推進する上でのプラスの効果が得られることも期待できる。

企業の人を活かした連携の他に、事業レベルでCSOと連携する形もある。パナソニックによる、無電化地域に灯りを届けるプロジェクト「LIGHT UP THE FUTURE」では、現地でプロジェクトに取り組む一般財団法人JELA(ジェラ)とパートナーシップを結び協働体制で取り組んだ。

単なる物資提供ではなく、どうしたら地域の人々が負の連鎖から抜け出せるのか、そのための現地調査を担った。施策をやって終わりではなく、成果を正確に数値化し次の取り組みに活かすためのデータの算出も行った。

一過性の慈善活動ではなく、社会課題を根本的に解決するために、専門性の高いCSOの力が事業レベルで活かされた事例だ。

企業とCSOの連携の課題: 相互理解の不足など

このようにお互いの力を掛け合わせた共創の事例がある一方で、日本企業とCSOの連携は思った以上に進んでいない。原因として、相互理解の不足や、CSOの存在を知る機会があまりないことなどが挙げられる。

自社が取り組むべき社会課題に対して、力を発揮してくれるCSOがどこにいるのか探し方が分からなかったり、紹介されたとしても本当にベストな団体なのか比較検討がしにくかったりするのだ。

自社の製品やブランドを広く世にアピールする機会が多い企業に比べ、草の根で目の前の社会課題に向き合って活動をし続けてきたCSOはあまり自分たちの認知を高める活動は行ってこなかった。

SDGsの目標年である2030年を控え、これからCSOへのニーズはますます高まっていくだろう。企業とCSOが、互いに真価を発揮できるような出会いをどうつくれるか。その方法がいま求められている。

itomegumi

伊藤 恵(サステナビリティ・プランナー)

東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニットPOZI サステナビリティ・プランナー/コピーライター 広告会社で企業のブランディングや広告制作に携わるとともに、サステナビリティ・プランナーとしてSDGsのソリューションを企業に提案。TCC新人賞、ACC賞、日経SDGsアイデアコンペティション supported by Cannes Lionsブロンズ受賞。執筆記事一覧

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キーワード: #NPO#SDGs#プロボノ

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