使い捨てとリユースカップ、環境負荷が低いのはどちらか

記事のポイント


  1. 環境NGOが使い捨てカップとリユースの環境負荷を比較した報告書を発表
  2. 年20回程度の利用でも、使い捨てよりも、リユースの方がCO2排出量は低い
  3. 人体や生態系への影響などでも環境影響が少ないことが分かった

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京・港)はこのほど、使い捨てカップとリユースの環境負荷を比較した報告書を発表した。リユースカップシステムは、年間20回程度の利用でも、使い捨てカップよりも、CO2(二酸化炭素)排出量や生態系への影響などで環境負荷が低いことが分かった。(オルタナ副編集長=吉田広子)

リユースカップのライフサイクルアセスメント(LCA)を使い捨てカップと比較した報告書「リユースが拓く未来 ーー東アジアにおけるリユースカップシステムと使い捨てカップシステムの環境パフォーマンスに関するライフサイクル比較評価」
報告書「リユースが拓く未来 」

■カフェチェーンで年3億6950万個の使い捨てカップを消費

日本政府は「プラスチック資源循環戦略」のなかで、「2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル」という目標を掲げる。

だが、「日本のカフェ業界における使い捨てカップの現状」(2022年7月公表、グリーンピース・ジャパン)によると、9つの大手カフェチェーンだけで年間3億6950万個の使い捨てカップを消費している。大手カフェだけで1日100万個が使い捨てされていることになる。コンビニを含めれば、さらにその数は大きくなる。

9社のうち最も年間消費量が多かったのはスターバックスで2億3170万個に上った。次がタリーズの7250万個、3番手がプロントの3530万個だった。

飲食店で利用されるカップには、使い捨てカップ、店内用カップ(マグカップやグラスなど)、ユーザーが持ち込むマイボトル、店が貸し出すリユースカップなどがある。

グリーンピース・ジャパンは、マイボトルはユーザー主導であることと、店内用カップは持ち帰りができないため、リユースカップシステムに着目し、環境負荷を調査した。

リユースカップシステムでは、ユーザーは店からリユースカップを借りて、店内外の指定された場所に返却する。使い終わったカップはリユースサービス業者が回収・洗浄し、カップを飲食店に戻す仕組みだ。

■年20回程度のリユース利用でCO2排出量を18%削減

グリーンピース・ジャパンは、東京、韓国・釜山、台湾・台北、香港でリユースサービスを提供する事業者5社の実証実験データを分析し、16項目の環境影響項目で、使い捨てカップとリユースカップの環境影響を検証した。カップ単体の環境負荷だけではなく、原材料から廃棄物の最終処分まで、ライフサイクル全体での環境負荷を比較した。

その結果、リユースカップは主に、CO2排出量の削減、淡水・海洋生態系への影響の低減、大気質の向上で優れていることが分かった。

例えば、日本で、低頻度(年間20回程度)でリユースカップを使用した場合、CO2排出量を18%削減できる。高頻度(年間60回程度)であれば、30%の削減に貢献できる。

海洋の生態系に関しても、低頻度で有害物質のジクロロベンゼンの排出を25%低減、高頻度で33%低減できる。人間への影響も、低頻度で49%、高頻度で57%低減できる。

使い捨てカップシステムのライフステージで最も環境負荷が大きいのは製造段階で、リユースカップシステムの環境影響は、洗浄工程の環境負荷が最も大きかった。

グリーンピース・ジャパンプラスチック担当の大館弘昌氏は、「政府が掲げる目標『リユース・リサイクル6割』を達成するためにも、財政支援などを通じて、企業のリユース導入への障壁を下げる必要がある。企業にも『リユース目標』やロードマップを公表してほしい」と話した。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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