記事のポイント
- 米環境NGOなどが「生物多様性崩壊をもたらす金融業務」を公表した
- 森林リスクの高い産品6品目に携わる約300社の商業資金の流れを分析した
- 日本には紙とパーム油サプライチェーンでの多くの資金提供を指摘した
米環境NGOがこのほど、「生物多様性崩壊をもたらす金融業務」を公表した。同報告書では森林破壊リスクの高い6品目に携わる約300社の商業資金の流れを分析した。日本のメガバンクに対しては、紙パルプとパーム油のサプライチェーンに約25兆円もの資金提供を行う点を指摘した。(オルタナ編集部・下村つぐみ)
米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、本部サンフランシスコ)を含む8団体で構成する「森林と金融」連合は、森林破壊のリスクが高い産品6品目(牛肉、パーム油、紙パルプ、ゴム、大豆、木材)に携わる、約300社の商業資金の流れを分析した。
調査結果を報告書「生物多様性崩壊をもたらす金融業務」にまとめた。
同連合は、上記6品目のサプライチェーン上流に関与する企業のうち、企業規模が大きく、影響力のある企業を選定した。中には、王子グループ(紙パルプセクター)や伊藤忠商事(大豆セクター)など日本の企業の名前もある。
分析の結果、パリ協定締結以降から2023年9月までの間で、世界の銀行が高リスク林業・農業企業に提供した資金は3070億ドル(約440兆円)に上った。
森林リスク産品への資金提供者のトップはブラジル銀行とブラデスコ銀行だった(約102兆円)。両行ともブラジルの4大銀行の一つで、主に牛肉セクターと大豆セクターに融資していた。
英国の調査報道団体ビューロー・オブ・インベスティゲイティブ・ジャーナリズムは、ブラジル産牛肉に対する世界の需要を満たすために、わずか6年間で8億本以上の木が伐採されたと報じた。
日本に対しては、紙パルプとパーム油サプライチェーンにおける多くの資金提供を指摘した。みずほフィナンシャルグループが約74億ドル(約10兆6千億円)で、投融資額の多さでは世界8位となった。三菱UFJフィナンシャル・グループは約8兆3千億円(12位)、SMBCグループは約6兆6千億円(17位)と続いた。
銀行と投資家の投融資方針も、ESG関連基準38項目に基づき採点した。平均は100点満点中わずか17点と低く、50点を超えた銀行はわずか2行のみだった。
日本の金融機関の平均得点は21点で、インドネシアやマレーシアの金融機関よりも低い結果となった。
同連合コーディネーターのメレル・ヴァン・ダー・マーク氏は、「国連のPRI(責任投資原則)などに加盟している金融機関が、森林破壊を助長する企業に融資を続けており、これは明らかな偽善だ。金融機関が独自のESG基準を設定するだけでは不十分であり、各国政府が政策や罰則措置を設ける必要がある」と強い言葉で指摘した。