米サステナブル・ブランド会議でも「協働」「ストーリーテリング」「CSV」に脚光

UCバークレー校の講義中に、ある教授が講義中に何気なく言った「出がらしのコーヒー豆でキノコを育てることは理論的には可能」、という一言を、そのまま実現してしまった二人の卒業生が立ち上げたベンチャー「バック・トゥ・ザ・ルーツ」。若さと才気あふれるプレゼンで会場を沸かせた

2)「方法論」から「ストーリーテリング」へ

カーボン、汚染物質や化学物質、紛争鉱物、水資源のトラッキングとレポーティング。LCAなど環境や社会問題を網羅するサステナビリティ関連の計測、公表などの「方法論」は、どんどん成熟して精度を増し、細分化・複雑化している。

それらのコストも増加する中、ここにきて、「なぜ自分の企業・ブランドはこれらをやっているのか」「どこまでやるべきなのか」「ビジネスの本分に鑑みて、今後何を達成していきたいのか」という哲学的な問いかけに立ち返った、新しいメッセージの発信の仕方が、大きな潮流となっている。

「○○年に○○を○%削減」などの方法論だけでは、本当に伝えたい相手に、伝えたいことが届きにくい。

その奥にある企業・ブランドの信念や情熱、ステークホルダーと共有する価値、あるいは創造している文化を、血の通った「ストーリー」として発信し、「個人よりももっと大きな意義の一部でありたい」と願う消費者の共感と支持を得るには、「ストーリーテリング」の力が大切なのだ。

21世紀はソーシャルネットワークの時代であり、世界中の人が瞬時に情報を共有できる仕組みがあることから、ストーリーテリングにおいて重要となるのは、きちんとした方法論に裏付けられた「本物」の取り組みや透明性(嘘は見破られる)だ。

そして受け取り手が、それぞれの生活の中でそのメッセージを自分のこととして身近に感じられ、感情移入できるようなストーリーであること。さらには、彼らが自発的にブランドの「伝道者」となって、多対多のソーシャルメディアのネットワークの中で、ブランドの情報を共有できるようなフォーマットであることが大事だ。

企業やブランドが真剣に取り組んだ「ストーリー」を、聴く者一人ひとりが、その心を大きく開いて受け止め、共振できるようなパッケージにして送る(テリング)ことが、サステナビリティ・コミュニケーションでは一層重要になってくる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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