記事のポイント
- 戦禍を逃れてきたウクライナ出身の男子大学生が「日本語の壁」に挑む
- 学習アプリ開発のスタートアップ「モノグサ」で1年以上インターンシップ
- 日本語学習支援だけでなく、生活の困り事や文化の違いの悩みにも対応する
ウクライナから避難してきた一人の男子大学生が、日本語学習支援のアプリ開発をなし遂げた。スマートフォン向け学習アプリを開発するスタートアップでインターンとして働き、避難民の前に立ちはだかる「日本語の壁」に挑んだ。日本語学習だけでなく生活の困りごとや文化の違いについての悩み相談にも乗る彼は、その経験をレポートにまとめた。(オルタナ副編集長・北村佳代子)
法務省によると、日本に住むウクライナ避難民の数は2月7日現在、2098人だ。その一人、ハイチェンコ・マクシムさんは、キーウ国立航空大学サイバーセキュリティ学部に在籍する大学3年生だ。ロシアの侵攻後、2022年5月に来日した。
幼少期から日本のアニメが好きで、日本語学習経験があったほか、デジタルにも強く、2022年9月にモノグサ株式会社にインターンとして採用された。
そこでマクシムさんは避難民の多くが苦労する「日本語の壁」に挑戦。「記憶学習」のできるプラットフォームアプリを使い、ウクライナ人が日本語を学べるように、ウクライナ語で日本語を覚えるような学習アプリを開発した。イメージとしては、英検や大学受験用の参考書のようなものだ。
モノグサは、人の「記憶」定着をサポートするアプリを開発するスタートアップだ。リクルートで学習アプリ「スタディサプリ」を手がけたCEO(最高経営責任者)と、米グーグルでAndroid向けソフトウェアキーボード関連の開発を手がけてきたCTO(最高技術責任者)の2人が2016年に共同で創業した。
現在約130人の社員の中には外国籍社員も複数いる。多様性を重んじるために、お盆やクリスマスなどの公式な休みや行事を、同社は敢えて行わないという。
社名の由来でもある「ものぐさで行こう」をバリューの一つに掲げる。「いつでもボードゲームを遊ぶ余裕を持つ」ことを行動指針として、採用の最終面接でもボードゲームを行う。会社の価値観を知ってもらうためだ。
広報部の中村大志さんは、「スキルは後からいくらでもキャッチアップできる。でも実際の一人ひとりの伸びしろは人間性にある」とオルタナの取材に答える。
同社は、ロシア侵攻後、ウクライナ避難民に対して自社らしい支援を模索してきた。その中で「無償でウクライナ避難民にサービスを提供するだけでなく、優秀な避難民を雇用し、本質的かつ継続可能な業務のために雇用することが、双方にとってサステナブルだと考えた」(中村さん)
「ウクライナ避難民への支援として始めたが、今は、マックス(マクシムさんの愛称)に、当社の戦力として力を貸してもらっている感じだ」(同)
マクシムさんは、ウクライナ避難民向けに、日本語能力試験(JLPT)の合格をめざす「JLPTクラス」も開設した。同クラスから2023年7月に3人、12月には延べ15人のウクライナ避難民がJLPTに合格した。
■「日本のスタートアップで1年間働いてみた」レポート
マクシムさんが日本語で書いた「日本のスタートアップで1年間働いてみた。~ウクライナ避難民留学生のインターンレポート~」は、こちらから読むことができる。