販売累計2億個、リユース・インクカートリッジのエコリカ

記事のポイント


  1. エコリカは使用済みインクカートリッジを回収・リユースして販売する
  2. 2003年から累計約2億個を販売し、純正品を含む市場シェアは3位に
  3. 販売1個につき1円を環境NGOに寄付し、累計額は1億円を超えた

サステナブル・セレクション 三つ星企業紹介

エコリカ(大阪市)は、使用済みインクカートリッジを家電量販店の店頭などで回収し、製品にリユースするシステムを国内ではじめて確立した。2003年の創業から約2億個を販売し、メーカー純正品を含む市場シェアは3位を占める。製品1個につき1円を環境NGOの世界自然保護基金(WWF)ジャパンに寄付する活動も続けており、その累計額は1億円を超えた。宗廣宗三社長は「リユースが当たり前になる社会をめざす」と話す。(オルタナ副編集長・長濱慎)

使用済みインクカートリッジをリユースしたエコリカの製品

毎年2億個廃棄されるインクカートリッジを「製品」に

――2003年7月にエコリカを立ち上げて21年目になります。インクカートリッジのリユース事業を始めた経緯を教えてください。

宗廣:1980年代からパソコン周辺機器の卸売を行っていました。展示会の視察などで北米に出張する機会も多く、現地で使用済みインクカートリッジのリサイクルビジネスを目にしたのが始まりです。

当時、日本国内では使い終わったカートリッジを廃棄するのが当たり前で、年間約2億個がゴミとして捨てられていました。それを回収・再利用できる仕組みができないかと考えたのです。

そこで従来の卸商社とは別に、エコリカを立ち上げました。社名は「エコロジー・リサイクル・カンパニー」を意味します。2003年はPCリサイクル法(資源有効発用促進法)の改正もあり、「エコ」というキーワードが注目を集めはじめた時期でした。

――使用済みインクカートリッジの回収からリユース、流通まで、すべて自社ワンストップで行っていますね。

宗廣:家電量販店やホームセンターなど10000ヵ所以上に回収ボックスを設置し、使用済みのカートリッジを回収します。そこから製品としてリユースできるものを仕分けし、インクを再充填し、必要に応じて消耗部品を交換するなどして出荷します。

回収センターは岐阜県に置き、全国から集まるカートリッジをメーカー別、型番別、色別に仕分けます。ここでは地域の雇用創出に貢献するため、シルバー人財を積極的に採用しています。

仕分けが終わったカートリッジはフィリピンに送り、製品に再生します。経済特区であるスービック地域に専用の工場を置き、ここでも女性を中心に年間400人の現地雇用に貢献しています。

2003年からの回収個数は4億個以上で、約50%の2億個を製品にリユース、残り50%はリサイクルに回してきました。一つのカートリッジに使用するプラスチック量を20グラムとすれば約4000トンの原料を有効活用し、CO2排出量に換算すると年間2000トン相当を削減したことになります。

量販店などの協力を得て、自社で回収から再生、流通まで行うシステムを確立

エコマーク取得やSDGsなど時代の変化が追い風に

――日本ではじめて回収・リユースするシステムを確立したとのことですが、どのような点に苦労しましたか。

宗廣:ビジネス化には量を多く回収しなければならず、その仕組みづくりが大変でした。ゴミとして回収するには自治体の許可を得た車両を使わなければならないなど、制度的な制約があったのです。

そこで考え出したのが、ゴミではなく「製品の原料」として買い取ることでした。エコリカが買い取り、回収に協力してくれた量販店に手数料を支払い、運搬費を含む費用も負担する仕組みです。こうすることで、回収ボックスを置く店舗にインセンティブが生まれます。

純正品メーカーとはライバル関係になるため、市場参入には困難もありましたが「環境に良い製品をお客さまに」と対話を重ねました。こうした想いを理解し応援してくれる量販店の存在は心強く、回収・販売ルートの拡大を大きく後押ししてくれました。

エコリカ製品の品質は純正品とほとんど変わらず、低価格です。印刷処理能力(印刷枚数)や画質は純正品とほぼ同等で、品質保証があり、使用するインクは重金属や発がん性物質が含まれていないかの検査をクリアし、再生インクカートリッジ部門初の「エコマーク認定」を取得しました。

こうして公的な認証を得られたことや、「地球環境大賞」(2009年、2023年)をはじめさまざまな賞を受賞できたことが、エコリカ製品の認知度向上につながりました。さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の採択(2015年)で社会の環境に対する意識が高まり、エコリカ製品を採用する企業も増えています。

現在は互換品の販売シェアで約70%、メーカー純正品も含めたインクカートリッジ全体では3位(約10%)をエコリカ製品が占めています。

企業連合に参加しプラのリユース・リサイクル推進も

――販売した製品1個につき1円を、環境NGOのWWFジャパンに寄付する活動も続けています。

宗廣:2003年の創業当初から続けている取り組みで、23年2月末に累計金額が1億円を超えました。これは社会貢献であるとともに、使用済みカートリッジを量販店まで持ってきてくれたユーザーにベネフィットを還元できないかと始めた取り組みです。

エコリカは、WWFジャパンのサポートで23年11月に発足した「国際プラスチック条約 企業連合」にも参画しています。この枠組みは、企業が日本政府に対して野心的な国際条約の発足を働きかけるために発足しました。エコリカは参画10社で最も小規模ですが、プラスチック製品による環境問題の解決に力を入れて取り組んでいきます。

寄付金1億円突破でWWFから感謝状。宗廣社長(左)と、東梅貞義WWFジャパン事務局長

――最後に、今後の展望を教えてください。

宗廣:直近では2025年に開かれる大阪・関西万博の「TEAM EXPO2025」共創パートナーになりました。ここで多くの企業や団体とつながり、取り組みを広げる一歩にしたいと考えています。

エコリカは創業以来、公的な支援に一切頼ることなくリ事業を続けて21年になりました。広告などを通して周知にも努めていますが、まだ認知度を上げる必要性を感じています。

世界的に見て日本は多くのプリンターメーカーがあるにも関わらず、インクカートリッジのリユース・リサイクルシステムが確立された社会にはまだ程遠いのが現状です。それが当たり前になるまで、事業を続けます。

※エコリカの「リサイクルインクカートリッジ」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル・セレクション2023」の三つ星に選ばれました。「サステナブル・セレクション2024」の応募は、4月1日から受け付けます。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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