EU、人権・環境リスク対応を義務化するCSDDDを大幅緩和へ

記事のポイント


  1. EU理事会はコーポレート・サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令を承認した
  2. これは企業のサプライチェーン内での環境・人権侵害の法的責任を規定するものだ
  3. 政治的圧力もあり、適用企業数が大幅に減る妥協案となった

EU理事会は3月15日、コーポレート・サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)を承認した。CSDDDは、企業のサプライチェーン内での環境・人権侵害に関する法的責任を規定するものだ。政治的圧力などへの妥協案として、適用対象の企業数が3割程度に減ったが、CSDDDの存続の意義は大きい。4月の欧州議会の承認を経て、法制度化される見込みだ。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

EU理事会は企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)を承認した

CSDDDは、企業がサプライチェーン内での環境・人権侵害に関する法的責任を規定するものだ。

EU域内で活動する企業は、事業活動のサプライチェーン全体で、環境および人権に及ぼす悪影響の実態および可能性を特定・評価するためのデュー・ディリジェンス(適正な評価手続き)を実施し、そうした悪影響を防止・緩和、もしくは終息しなければならない。

3月15日、EU理事会はCSDDDを承認したが、承認した内容は、当初草案から大幅に縮減する形となった。

■大企業のみが適用対象に

最終合意された内容では、CSDDDの適用対象は、従業員1000人超、全世界での純売上高が4億5000万ユーロ超のEU企業とした。

EU域外企業は、前年度にEU域内で4億5000万ユーロ以上の純売上高を計上した場合に適用対象となる。

適用時期も以下のように段階的だ。
・2027年以降:従業員5,000人超、かつ売上高15億ユーロ超の企業
・2028年以降:従業員3,000人超、かつ売上高9億ユーロ超の企業
・2029年以降:従業員1,000人超、かつ売上高4億5000万ユーロ超の企業

当初、従業員500人、売上高1億5000万ユーロ超の企業を対象としていたことを考えると大幅な譲歩だ。

また、従業員数などの要件を満たさなくても、人権や環境面で高リスクの産業に属する企業は当初、適用対象にする方向で進めていた。しかし妥協案では、この高リスク産業に対する措置はなくなった。

これらの変更の結果、CSDDDの適用対象企業の数は当初想定の約3割にまで減少したと推定される。その数は、EUで事業を展開する企業全体の約0.05%とも報じられている。

■混乱の末での妥協案
■欧弁護士「適用対象外でも、企業は準備を」

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北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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キーワード: #サステナビリティ

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