アシックス、ランニングシューズをリサイクルしやすく

記事のポイント


  1. アシックスが環境配慮型の新たなランニングシューズを発売する
  2. アッパー部分を単一素材にすることで、リサイクルしやすくした
  3. 使用後のシューズを無償で回収するサービスも始めた

アシックスが環境に配慮した靴を相次いで発表した。同社は2023年9月、CO2排出量が世界最少のスニーカーを発売。2024年4月12日には、ランニングシューズ「NIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)」を販売する。アッパー(甲被)部分を単一素材にすることで、リサイクルしやすくした。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「ニンバス ミライ」(税込2万2000円)。東京、大阪の店舗やオンラインなどで販売する
「ニンバス ミライ」(税込2万2000円)。東京、大阪の店舗やオンラインなどで販売する

「素材を再生利用できるように、ニンバス ミライの設計を進めたが、『機能性』『デザイン性』『サステナビリティ』の両立は非常に難しかった。それでも、社会により大きな影響を与えるために、主力商品であるランニングシューズ、その中でも最も人気のシリーズ『ニンバス』での展開にこだわった」

上福元史隆・アシックスフットウエア生産統括部マテリアル部部長は、開発経緯を語る。開発期間は3年7カ月を要した。

独スタティスタの調査データによると、世界では年間239億足の靴が生産され、その95%が埋め立て処分か焼却処分されている。

アシックスは、靴のリサイクルが進まない要因として、製品に2つの課題があると説明する。一つは、アッパーとソール(足底)の粘着が強く、分別できないこと。特に、耐久性が求められるスポーツシューズであれば、なおさらだ。もう一つは、靴は数十種類の複合素材を使うため、再生利用しにくいことだ。

そこで同社は、アッパーとソールを接合する接着剤を独自に開発した。接着強度を保ちながら、熱を加えると簡単に引きはがせる。靴の素材も見直し、ひもを通す穴も含めアッパー部分を100%ポリエステルの単一素材にした。そのうち、75%以上が再生ポリエステル素材だという。

「ポリエステルは衣類に使われることが多い素材で、リサイクルも進んでいる。アパレルのリサイクルループ(資源の循環)にも入りやすいと考えた」(上福元部長)

■ 使用後の靴を無償で回収

アシックスは、使用後のニンバス ミライを無料で回収するサービスも始めた。ユーザーは専用サイトで回収を申し込める。靴には、専用サイトのQRコードが印刷されている。

集まった靴は、外部の事業者がリサイクルを行う。アシックスの試験では、リサイクル処理されたアッパー素材の87.3%が、新たなポリエステル素材として再製品に使用できることが分かった。ソール部分は粉砕処理し、マットやパネルなどの素材にリサイクルする予定だという。

修理については、「ランニングシューズは耐久性が重要で、修理することで強度が落ちてしまう可能性がある。使用後の製品をしっかり回収して、リサイクルを進めていきたい」(上福元部長)とした。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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