キヤノンはサステナ経営で周回遅れ: 脱炭素も再エネも後ろ向き

記事のポイント


  1. キヤノンは精密機器メーカーで唯一、再エネ電力の普及目標を掲げていない
  2. 気候変動に否定的な主張をする系列シンクタンクを問題視する声もある
  3. キヤノンのサステナ経営の遅れはリコーやニコンなど同業他社に比べて際立つ

キヤノンのサステナ経営が遅れているとの指摘が、株主やNGOから相次いでいる。例えば一部の株主や環境NGOからは、再エネ電力100%に向けた目標を掲げないことや、気候変動に否定的な主張をする系列シンクタンクを問題視する声が上がる。同社の「サステナ経営」の遅れは、リコーやニコンなど同業他社に比べて際立つ。(オルタナ副編集長・長濱慎)

■再エネ目標に関する質問に拍手

「(再エネの普及目標を)言うだけなら、いくらでも言うことはできる」

キヤノンが今年3月に開いた株主総会で、株主の一人、佐久間裕美子氏は同社が再生可能エネルギー電力の普及目標を掲げていないことについて質問した。それに対し、株主総会の議長を務める御手洗冨士夫・会長兼社長CEOは冒頭のように答えたという。

御手洗会長は昨年の株主総会で、あやうく信任票が5割を切りかねないという瀬戸際まで行った。同社の取締役の女性が一人もいなかったことに対する不信任票が増えたためで、当時は「キヤノンショック」として話題を集めた。

御手洗会長に先立ち、常務執行役員の郡司典子サステナビリティ推進本部長は、こう話した。

「気候変動対策については、さまざまな方面から取り組みを進めていく。現在は商品寿命の延伸やリサイクルに力を入れているが、再生可能エネルギーへのシフトも大切だと思っている」

キヤノン経営陣は普及目標について最後まで明言を避けたが、佐久間氏の質問には局部的に拍手が上がったという。佐久間氏は文筆家としてニューヨークを拠点にカルチャーやファッション、政治、社会問題などを取材するとともに、自らもアクティビスト(運動家)として気候危機などの問題に声を上げる。

「アクティビストには『もの言う株主』という意味もあります。記事を書いて伝えることも重要ですが、株主総会に出て他の株主が聞いている前で経営陣に直接訴える方法も効果があると考えるようになりました」と、佐久間氏は株主になった経緯を話す。

右が株主総会で御手洗会長に質問した佐久間氏
右が株主総会で御手洗会長に質問した佐久間氏(写真提供:本人)

■世界全体の再エネ普及率は12.9%、日本は4%
■系列シンクタンクの研究者が脱炭素を否定
■レピュテーションリスクの回避にも再エネ目標を

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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