「日本の社員エンゲージメントは世界最低」と米ギャラップ社

記事のポイント


  1. 米国ギャラップ社「グローバルワークプレイスの現状2024年版」を公表した
  2. その中で、特に従業員の精神的健康悪化に警鐘を鳴らした
  3. 「従業員エンゲージメント」は、「最低レベル」の6%にとどまった

米ギャラップ社(本社ワシントンDC)は6月12日、エンゲージやストレスについて世界中の従業員の声を捉えたレポートを公表した。このうち「従業員エンゲージメント」について、日本は昨年同様、最低レベルが続く。自らに肯定的な評価を控える国民性、受身的な仕事に対する姿勢が要因ともみられる。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

ギャラップ社は米国の世論調査及びコンサルティングを行う。12日に公表したレポートは「グローバルワークプレイスの現状2024年版」の名称だ。

ジョン・クリフトンCEOは、「人々の精神的健康はさらに悪化している。過去 10 年間で、ストレス、悲しみ、不安、怒り、心配を表明する人の数が増加し、ギャラップ調査が始まって以来、最高レベルに達している」と警鐘を鳴らした。

エグゼクティブ ブリーフでは、次の通りに報告した。

  1. 従業員エンゲージメントの低さが世界経済に 8.9 兆米ドル、世界の GDP の 9% の損失をもたらしていると推定している。
  2. 従業員のメンタルヘルスでは、世界の従業員の 20% が日常的に孤独を感じている。
  3. 孤独感は、完全にリモートで働く従業員で最も高くなる。
  4. 2023 年には、若い従業員の幸福度が低下した。
  5. 従業員エンゲージメントは将来への希望と関連している。
  6. 公正な賃金、安全な仕事、家族の責任、出産を目的とした労働法を持つ国の従業員は、最もストレスが低いと報告している。
  7. 従業員の幸福と組織のパフォーマンスにおける管理者の役割では、管理者は、チーム従業員のエンゲージメントに70%影響している。
  8. 国全体で、管理者がエンゲージメントすると、従業員もエンゲージメントする可能性が高くなる。
  9. ベスト プラクティスの組織では、管理者の 4 分の 3 と非管理者の 10 人中 7 人がエンゲージメントしている。
  10. 組織がエンゲージメントの高い従業員の数を増やすと、利益、定着率、顧客サービスなど、組織のさまざまな成果が向上する。

世界の「従業員エンゲージメント」は2023年、過去最高の23%をキープした一方、日本は熱意あふれる(従業員エンゲージメントの強い)社員の割合は1%改善し6%だが、調査対象139カ国中最低レベルが続く。最低レベル6%は、エジプト(昨年対比-6%)、香港(同-1%)、日本の3カ国。

世界の主な国の割合は、世界平均23%(±0%)に対し、フィリピン35%(+5%)、米国33%(-1%)、インド32%(-1%)、ブラジル31%(+3%)、タイ29%(+4%)、南アフリカ29%(+3%)、インドネシア25%(+1%)、豪州21%(+2%)、ウクライナ20%(-3%)、中国19%(+2%)、ドイツ15%(-1%)、韓国13%(+2%)、英国10%(土0%)、スペイン9%(-1%)、イタリア8%(+4%)、フランス7%(土0%)、日本6%(+1%)である。

日本企業の従業員エンゲージメントが低い理由について、日本では回答において、国民性すなわち周囲に配慮し、自らに肯定的な評価を控える傾向が芳しくない調査結果に繋がったとする指摘もある。

仕事に対する姿勢が受け身的で、経営陣や上司が決めたことに従い、自分の会社の方向性を従業員自らが提案する風土は乏しいという傾向が日本の従業員エンゲージメントが低いとされる原因の一つではないだろうか。

企業の成長には、従業員が企業のパーパス(存在意義)を理解し、自らの担当業務が社会に対して直接的・間接的にどのような意味を持ち、貢献しているかを認識することが不可欠であり、高い従業員エンゲージメントこそが成長のエンジンそのものであろう。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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