MDGsは「CSR」から「市場原理」活用へ【CSRフロンティア】

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(原田 勝広/明治学院大学教授)

途上国の課題解決に企業のリソースを使う発想は企業のCSR意識を高め、主導役の国連の役割に改めてスポットライトを当てたような気がする。そのツールになっているのが、国連グローバルコンパクト(GC)であり、ミレニアム開発目標(MDGs)である。

豊富な情報量と創造性を持つ国連官僚ならではの見事な手綱さばきではあったが、当初は、ビジネス・セクターの反応はいまひとつ。「貧困削減という公共政策にかかわる問題を企業に期待されても」といった冷めた空気が支配的だった。そうした空気が変わったのはBOP(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)ビジネスという言葉が登場してからだ。

つまり、貧困削減など途上国の課題解決は、市場原理を活用したコアビジネスを通して実現すべきであるという考え方である。国連開発計画(UNDP)は、BOPという、物議をかもしかねない言葉ではなく包括的な市場の開発(IMD)というコンセプトを打ち出し、この流れを決定的にしつつある。

途上国の貧困層は生産者、消費者、賃金労働者であり、彼らを国内外の市場と結び付け、統合、促進させるというアプローチである。これを支えるプログラムは3つある。

まず、「持続可能なビジネス育成(GSB)」。これは企業のCSRをUNDPが仲介しようというものだ。日本企業では、三井物産(モザンビークで太陽光発電を活用した農業支援)やパナソニック(タンザニアのミレニアム・ビレッジ・プロジェクトへソーラーランタン寄贈)など5件の連携実績が存在する。

2つ目は「包括的な市場の育成(GIM)」であり、調査、研究で包括的なビジネスモデルを開発するイニシアティブだ。これを受けて動き出す3つ目が「ビジネス行動要請(BCtA)」で、企業への働きかけの枠組みである。注目すべきは、この経済と開発を両立させるビジネスモデルを促進するBCtAだ。

主役はCSRからコアビジネスへ

英国国際開発省(DFID)や米国国際開発庁(USAID)などを味方につけ、農業、保険、金融、教育などの分野で世界の55 社が参加、42 の途上国で23万8,000人の雇用を作り出している。その顔ぶれもコカ・コーラ、マイクロソフト、ファイザー、ボ-ダフォンなどそうそうたるものである。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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