(柳田 啓之/株式会社イースクエア)
最近ある大手メーカーのCSR部門の責任者とお話しした際に、「CSR部門に付加価値はあるのか」というドキリとする質問を受けた。その会社の売上は1兆円超、従業員は1 万人超と事業規模は大きい。
環境への取り組みは早い段階から行ってきており、環境報告書は2000年以前から発行。数年前からは環境・社会報告書をアニュアルレポート(有価証券報告書)と統合し、代表者のメッセージもはっきりしている。
また、CSR部門は人権や紛争鉱物などのCSR分野の動向をウォッチし、社内の担当部門に情報提供して対応を促し、SRIや調査機関などの問い合わせの窓口となり、各部門に詳細情報を確認して適切に対応しているという。
CSR推進体制の整備が一段落し、PDCA も回るようになった。目下の悩みは冒頭の通り、CSR部門が会社にどのような付加価値を提供できるか、ということだという。
もっと言うと、CSR部門はステークホルダーの「窓口」としての機能は持つものの、実際に実行するのは人事、IR、調達などの機能部門であり、付加価値を持たないのであれば人数は最小限でいいのではないかという問題意識を持っているようだった。
日本では2003 年が「CSR元年」と言われ、先進企業でCSR 室の設立や、CSR担当役員の任命などの動きがあった。その後、大手・中堅企業にその動きが広がり、いまではCSR部門があることがごく当たり前になってきている。
理想と現実のギャップどう埋めるか
イースクエアへの調査・コンサルティングの依頼も2004年~2008 年頃には先行企業のCSR 部門の立ち上げに伴う業務が比較的多かった。
それ以降は、CSR経営が回り始めたことを前提とした依頼が増えてきていることから、CSRの立ち上げから運用のフェーズに移っている企業が多いことが分かる。