震災は社会起業家の絆を強め、一層たくましくしたようだ。明治学院大学のボランティアセンターでは、岩手県陸前高田市に東京の小学生を連れて行くというユニークな支援を続けている。東京に本部を置く、社会起業家のネットワーク組織であるソーシャル・ビジネス・ネットワーク(SBN)が地元の人たちと、なつかしい未来創造株式会社を創設し、新たな街づくりに取り組んでいるが、明学はこのSBN と連携している。

その中心メンバーでもあるD男君が実習先に選んだのは、仙台にある渡辺一馬さんが代表を務める一般社団法人ワカツクだ。現場で渡辺代表と偶然出会い、関心を持ったのだという。ワカツクは地域を担う人材育成がミッションだが、エティックとも連携している。渡辺代表は、せんだい・みやぎNPOセンターの理事として震災支援に奔走した経験があり、それが生きている。被災地の復興には、それを担う若者の力が欠かせない。そうした強い思いが、ワカツクからは伝わってくる。

そうそう、カタリバにはE子さんがお世話になっている。カタリバは岩手県大槌町に大槌臨学舎、宮城県女川町に女川向学館というふたつのコラボスクールを開校している。勉強する場所がなくて苦労している子どもたちを対象に、放課後、学びの機会を提供しようというわけである。大槌町も明治学院大学とは縁が深い。大学と町でボランティア連携協定を締結し、「3・11」以降、継続して支援を継続している。当然ながら、カタリバとは接点があり、ここを訪ねた学生から、「カタリバに明学の卒業生がいてびっくりでした」との、うれしい報告も受けている。ご縁は広がるばかりである。

震災は不幸なできごとではあったが、学生たちが、日本の在り方や、自身の生き方を考えるうえで、何かを感じてくれたとすれば、いくらかは救われる気がする。その先達として、社会起業家という存在があり、ネットワークを広げていることは日本を新たな未来に導く「灯」のような気がする。学生が将来、役所や企業、あるいはNGOなどに進んだ時、大きな花を咲かせてくれるに違いない。

暑い中、汗まみれで、学生の実習先を走り抜けながら、一人ひとりが、意味深い、この夏の経験を胸に刻んで、キャンパスに戻ってきてくれるものと期待している。

【はらだ・かつひろ】日本経済新聞社ではサンパウロ、ニューヨーク両特派員。国連、NGO、NPO、社会起業家のほか、CSR、BOP ビジネスなどを担当。日本新聞協会賞受賞。2010 年明治学院大学教授に就任。オルタナ・CSR マンスリー編集長。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第12号(2013年9月5日発行)」から転載しました)

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