記事のポイント
- 水素特化型ファンド「Japan Hydrogen Fund」が立ち上がった
- MUFG、SMBC、トヨタなどが580億円を出資する
- 水素サプライチェーンの早期社会実装化を図る
水素特化型ファンド「Japan Hydrogen Fund」が設立した。MUFG、SMBC、トヨタなどが580億円出資した。個社ではできない水素サプライチェーン構築の支援を目的とした民間ファンドである。(室井 孝之=オルタナ総研フェロー)
日本での水素関連分野への投資に特化し、個社ではできない水素サプライチェーン構築の支援を目的とした民間ファンド「Japan Hydrogen Fund」が9月12日、設立した。
このファンドはJapan Hydrogen Fund GP, Inc.(「GP」)が、一般社団法人水素バリューチェーン推進協議会(「JH2A」)とアドバンテッジパートナーズ(「AP」)の相互協力の下で設立を目指していたものだ。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、福岡銀行、岩谷産業、トヨタ自動車、東京センチュリー、脱炭素化支援機構、トタルエナジーズなどがあわせて4億ドル(約580億円)の投資を発表している。
水素は、グローバルに脱炭素化が進む中で、燃焼時にCO2を排出しないことから、次世代エネルギーの主燃料として段階的な市場拡大が期待されている。
一方で、製造から利活用までの水素サプライチェーンに関して、生産効率、インフラ整備および技術開発などにおける課題が存在しており、本格的な社会実装には至っていないのが現状だ。
同ファンドは、世界的な課題である気候変動への対応としてカーボンニュートラルを実現するため、日本のみならず世界の水素サプライチェーン構築に向けて、①水素需要創出、②スケールアップ・技術革新によるコスト低減、③事業者に対する資金供給、などの課題解決を目的とする。
GPが運営主体となる。日本のプライベートエクイティ業界のパイオニアであるアドバンテッジパートナーズ(AP)グループ、日本を代表する水素関連企業が加盟する一般社団法人水素バリューチェーン推進協議会(「JH2A」)並びに、裨益(ひえき)性すなわち現在または将来、および直接的または間接的に日本への利益の還流の想定評価を行う三井住友DSアセットマネジメントの3社の協力の下、ファンド事業を推進する。
同ファンドは、IPEF(インド太平洋経済枠組み)域内を含む全世界を対象に、「水素の製造施設、貯蔵施設、輸送施設等への投資」や「これらのインフラ設備を構築する技術・サービス提供会社等へ投資」を行い、「水素サプライチェーンの早期社会実装化とスケールアップを図る」。
経済産業省や世界の公的セクターや民間セクターとの協業を通じ、日本裨益に貢献する水素サプライチェーンの早期社会実装化を目指す。