SMBC、トランジションファイナンス報告書で「ガス燃料必要」

記事のポイント


  1. SMBCがトランジションファイナンス報告書を発行した
  2. 報告書のなかで、再エネへの移行過程ではガス燃料が一定期間必要と指摘した
  3. 一方で、ガス火力支援時には、カーボンロックインの回避が不可欠と強調する

SMBCは11日、「Transition Finance Scorebook 2024」を公表した。トランジションファイナンスに係る課題の報告書である。再生可能エネルギーへの移行過程において、ガス燃料が調整用電力や自家発電等のために一定期間必要としている。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

Transition Finance Scorebook 2024
Transition Finance Scorebook 2024

トランジションファイナンスに係る課題を取りまとめた報告書の発行は本邦金融機関としては初である。カーボンニュートラル実現には、技術的・経済的に脱炭素化への代替手段が限られ、一足飛びに移行することが困難なセクターの移行を支援することが重要であると記している。

SMBCはトランジションファイナンスに関する定義や判断基準を示した「Transition Finance Playbook」の2023年5月発行以来、企業、海外・本邦金融機関、投資家や公的機関などのステークホルダーと対話を深めてきた。この中でGHG高排出セクターの中にはパリ協定との整合が困難なケースがあること、電力の脱炭素化には発電量確保やコスト低減などの課題があることを改めて認識した。

Scorebook2024は、そうしたトランジションファイナンスに係る実経験の中で得られた学びや課題認識、その解決に向けた行動提言をまとめたものである。

SMBCは、トランジションファイナンスを「脱炭素社会の実現に向けて長期的な戦略に則り、着実なGHG削減の取組を行う企業に対し、その取組を支援することを目的としたファイナンス手法」と定義している。

脱炭素社会に向けた道筋は、国や業種の特性から多様な経路が想定されること、技術・コスト面の課題が多く存在し、全ての産業が一足飛びには実現しないと認識している。

最もトランジションが必要なセクターは、電力および石油・ガス、鉄鋼、自動車セクターと捉えている。

そしてパリ協定との整合が困難なセクターに対する支援の強化ならびにトランジションにおけるガス火力発電の役割の明確化が必要とも認識している。

人口増加や経済発展に伴い、エネルギー需要がクリーンエネルギーの普及速度より早く増加する国では、全需要をクリーンエネルギーで賄うことは困難であり、「公正な移行」を実現するには、エネルギー需要増加への対応とトランジションを両立することが必要である。

また再生可能エネルギーへの移行過程において、ガス燃料が調整用電力や自家発電等のために、一定期間必要となる可能性があり、エネルギートランジションにおけるガスの役割を地域状況に応じて理解し、適切に支援することが重要であると述べている。

一方でガス火力支援時には、カーボンロックインの回避が不可欠と説いている。

すなわち、より排出の低い手段に置き換える余地があるにもかかわらず、化石燃料に依存するアセットが使用され続けることによって、排出ゼロまたはゼロに近いアセットへのトランジションが遅れたり妨げられたりする状況を避けることである。

あくまでパリ協定に整合したGHG削減目標との整合が重要としている。

SMBCグループは、投融資の際には「公正な移行」と「DNSH(著しい害を及ぼさない)」原則」すなわち労働者、地域社会、生物多様性へ著しい影響を及ぼさないかの確認を行っていると強調している。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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