静脈市場は「鶏が先か卵が先か」

6月末に経済産業省が発表した「循環経済の実現に向けた中間とりまとめ(案)」が物議を醸している。事業者に再生プラスチックの利用計画の策定を義務付けるというのだ。再生資源を使った商品の認証制度を検討する方針も盛り込まれている。

循環経済を実現するには当然の施策で、何も問題視する必要もないように見える。筆者もこうした方向性を重視した発言を繰り返してきた。

これまで廃プラスチックのマテリアルリサイクル率は極めて低く、数%に過ぎない。国内での再生プラスチックの需要が極めて小さいことが1つの理由とみられている。

だから、プラスチックを原料として使う事業者に再生プラスチックの利用計画策定を義務付ければ安定した需要が生まれ、マテリアルリサイクル率も上昇するはずだ。リサイクラーも安心して設備投資ができるから再生プラスチックの質も上がり、安定供給も可能になる。

だが、利用計画の策定を義務付けられた事業者から見ると事情は逆だ。そもそも再生プラスチックの利用が進まないのは、質の良い再生プラスチックが安定供給されないからであり、まずは安定供給の保証をすべきということになる。事業者は質や量が安定しない再生プラスチックをこわくて使えない。特に安全基準の遵守が条件である事業者の場合はそうだ。

とすると、問題はこうなる。再生プラスチックの安定した需要が先なのか、安定した供給が先なのか。答えは簡単で、両方が同時に必要なのである。ところが静脈市場の場合、これがなかなかうまく行かない。

■量の安定性の担保に課題

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細田 衛士(東海大学副学長、政治経済学部教授)

東海大学副学長、政治経済学部教授。1953年生まれ。77年慶応義塾大学経済学部卒業後、同大学経済学部助手、助教授を経て、94年より教授。2001年から05年まで同大経済学部長を務めた。中央環境審議会委員や環境省政策評価委員会委員なども歴任した。

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