記事のポイント
- 首都ネピドーを含むミャンマー各地に、洪水の被害が広がっている
- MFCGは安全な飲み水や食料、衣料品の緊急支援に取り組んでいる
- お金で「身代わり」として徴兵に行ってもらう事態も起き、分断の火種に
ミャンマーを襲った洪水の被害は、首都ネピドーを含む国内各地に広がりました。多くの住民が安全な飲み水や食料、衣料品を必要としており、私たちMFCGも緊急支援に取り組んでいます。内戦も続く中で2月に始まった徴兵制については、お金を払って「身代わり」として兵隊に行ってもらう事態も起きており、新たな分断の火種となっています。 (NPO法人ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会「MFCG」代表理事・医師・気功師・名知仁子)

■離任した丸山駐ミャンマー大使に感謝
最初に、9月27日をもってヤンゴンから離任した丸山市郎・在ミャンマー日本国大使館の特命全権大使に、感謝の言葉を贈ります。
丸山氏が特命全権大使に着任した2018年3月以降、数々の困難がミャンマーに降りかかりました。20年には、新型コロナのパンデミックがミャンマー全土に拡大。21年2月には軍事クーデターによって政情に激変が生じ、現在まで続いています。
困難の中、ミャンマーと日本の友好関係を保ち、両国にとってのバランスや他国との均衡を考慮し、ヤンゴンに在住する日本人のことを想い、さまざまな配慮をされた丸山氏の存在は心強いものでした。本当に感謝します。
軍事政権を承認しない日本は正式な後任でなく、臨時代理大使に切り替える方針を取りました。「日本は今までのようにサポートしてくれるのか」と心配の声も上げるミャンマーの友人もいますが、私は両国の関係が切れることはないと思っています。
■洪水で汚染された井戸水の消毒が急務に
前回お伝えした洪水ですが、9月に発生した熱帯低気圧の影響により各地に被害が拡大しています。現在、首都ネピドーと第二の都市マンダレー地域については急性期を脱し、仮設家屋をつくる段階に入っています。
その一方で、北東のシャン州ではまだ急性期が続いており、たくさんの住民が食料や衣料品の緊急支援を待っています。
大きな問題が、安全な飲み水の確保です。激しい降水量のため、大量の汚染水が井戸に流れ込んで飲めなくなっています。現在ミャンマーは雨季で、本来なら雨水も飲み水として活用しますが、洪水によって雨水を貯める容器が流されてしまいました。
そこでMFCGは、混濁した井戸水を飲み水として使えるよう、クロリンを提供することにしました。クロリンは塩素系の薬品で「プールの消毒剤のようなもの」と言えばイメージが伝わるでしょうか。
1錠3000チャット(約150円)で1000錠必要なので、約15万円が必要な計算です。10月12日に60万円をシャン州に送ったのを皮切りに、安全な飲み水が提供できるよう少しずつサポートを続ける予定です。サポートは被災地で活動する医師やボランティアチームと連携して行います。
■貧しい家の若者が「身代わり徴兵」で兵役に
2月に始まった徴兵制については、MFCGの活動地で第6次の徴兵が始まりました。対象は17歳~35歳までの男女。誰も手塩にかけて育てた子どもを兵隊にしたいわけではないでしょう。ご両親のお気持ちを考えると、本当に心が痛みます。
こうした中で「身代わり徴兵」と呼ぶべき現象も起きています。これは国軍に徴兵される人の代理を立てて、兵役に就いてもらうというものです。
各地の村では、これを遂行する仕組みもできつつあります。徴兵の対象となる若者を持つ家は、1人につき毎月3万チャットを積み立てます。例えば息子が3名いる場合は、毎月9万チャットを村長へ差し出すことになります。
もし国軍から徴兵がかかった場合、代理で行ってくれる人に300万〜600万チャットが支払われます。この積立の金額も支払われる金額も、村によって異なります。貧しい家は、この身代金をもらって子どもを兵に送り、家計を成り立たせます。
村人たちは毎月、どんな気持ちでお金を積み立てているのだろうかと思うと、心が痛みます。誰もが、自分の子だけは徴兵されないように祈っていることでしょう。そして、自分の子以外の誰かも徴兵されて欲しくないとも。
まさに、お互いがお互いの幸せを考えることができない分断社会。こうした悲劇がない未来がミャンマーに訪れるようにと、MFCGは現地にとどまり活動を続けています。
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