独の「リフード」ビジネス、残飯をエネルギーに

さらに一歩踏み込んで、廃棄食品を資源ととらえ、精製プロセスをシステム化し、クリーンなビジネスとして積極的に展開するリフードのコンセプトは、合理意識、環境意識の高いドイツで短期間に大きな支持を得ることになったわけだ。

ビジネスの成功には、食品廃棄に関する規制強化も大きく影響している。廃棄食品はどの国でも伝統的に、焼却または埋め立てするか、豚の飼料にされていた。

専用コンテナは食品回収後、毎回洗浄・殺菌される。利用者には毎日清潔なコンテナを配達 (写真提供ReFood)
専用コンテナは食品回収後、毎回洗浄・殺菌される。利用者には毎日清潔なコンテナを配達
(写真提供ReFood)

しかし1990年代以降、ヨーロッパ内で狂牛病などの食品汚染スキャンダルが頻発。これを受けてEU の食料廃棄規制が改正され、ドイツでは2006年以降、飲食店や食品加工業者から出る廃棄食品を直接家畜の飼料にすることは禁じられ、バイオガスに精製することが義務づけられた。

リフードの事業は、これを追い風に急成長した。同様の規制は欧州各国で広がりつつあり、同社の事業も国境を越えてフランス、英国、スペイン、ポーランドなど欧州7カ国に拡大している。

料金体系は部外秘だ。回収量や立地、域内の配送ルートに合致するかといった条件をもとに顧客ごとに料金を提示するが、「電力など製品の売上高も反映させ、あくまで良心的で競争力のある価格を保っています」(ボーイ氏)という。

真っ白な回収用トラックが路上でクリーンな印象をPRする(写真提供ReFood)
真っ白な回収用トラックが路上でクリーンな印象をPRする(写真提供ReFood)

顧客名、売上高なども公表していない。一方では顧客情報保護への配慮があり、一方では「廃棄物」を利用したビジネスの微妙さがあるためだろう。

「本来ならば、長年やってきたように残飯をそのままブタの飼料にするほうがずっと効率的でしょう」と、広報担当のマルセル・デリッヒス氏。食品を回収・精製してエネルギーに再生するのは、確かに手間とコストのかかるプロセスだ。

しかし、現在の先進国で実現可能な次善のソリューションであることは間違いない。「当社にとって経済活動と環境保護は相反するものではありません。両者を最善の形で結びつけることが事業の中核なのです」と、同氏は言葉を結んだ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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