「主要機関投資家は気候政策への働きかけが足りない」

記事のポイント


  1. 英インフルエンスマップが、世界の主要機関投資家の気候変動対策を調べた
  2. カリフォルニア州公務員退職年金制度(CalPERS)などを高く評価した
  3. 明治安田生命など日本の機関投資家はスチュワードシップ欠如と指摘した

投資家向けのデータプロバイダーである英インフルエンスマップはこのほど、世界の主要機関投資家30社の気候変動政策に与える影響を調べた。その結果、カリフォルニア州公務員退職年金制度(CalPERS)やニューヨーク市退職年金制度(NYCRS)などの機関投資家を高く評価した。一方、明治安田生命など日本の機関投資家については、気候政策への関与に対するスチュワードシップ欠如と指摘した。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

英国に拠点を持つ非営利シンクタンクのインフルエンスマップは、世界の主要機関投資家の気候政策に関するスチュワードシップ活動を調べた。調査対象は、日本の5機関投資家を含む世界の主要機関投資家30機関。

インフルエンスマップは、大半の機関が同分野で求められる責任を放棄していると評価した。対象30機関中22機関は、ネットゼロへのコミットメントを掲げるが、それを実現するための政府や企業へのロビー活動や、政策提言などの働きかけを十分に行っていないとした。

高評価を受けたのは、カリフォルニア州公務員退職年金制度(CalPERS)(評価スコアA)、ニューヨーク市退職年金制度(NYCRS)(評価スコアA-)、ニューヨーク州共通退職基金(NYSCRF)(評価スコアA-)、カリフォルニア州教員退職年金制度(CalSTRS)(評価スコアB)、Stichting Pensioenfonds ABP(ABP)(オランダ)(評価スコアB)だった。

高評価を受けた機関投資家には、1.5°C目標に整合した取り組みが目立った。科学に基づいた政策の提言、企業の気候情報開示の義務化などだ。株主の権利を保護するための規制、建物の脱炭素化、厳しい自動車排出基準などもそうだ。

日本の5機関投資家のスコアは、明治安田生命と地方公務員年金連合会(地共連)が「E+」、第一生命と日本生命が「E」、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「E-」だった。
(スコアは、A+からFまで)

この調査は、日本の5機関投資家を含めた対象30機関中の4分の3はD+以下のスコアだった。インフルエンスマップは、気候政策への関与に対するスチュワードシップが全体的に欠如しているとまとめた。

インフルエンスマップは、機関投資家に政策エンゲージメントを求めた。資産運用会社や投資先企業に対する、スチュワードシップ活動が、野心的な気候関連政策の実現を後押しすると指摘した。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #脱炭素

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