国際NGOが日本の人質司法や外国人の労働環境の是正求める

記事のポイント


  1. 国際人権NGOが年次報告書「世界人権年鑑2025」を発表した
  2. 日本の人権状況については、外国人労働者や障がい者の権利侵害などを問題視
  3. 人権侵害からの救済や人権保障を推進する国内人権機関の設立も求めた

国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(本部:ニューヨーク)は1月17日、年次報告書「世界人権年鑑2025」を発表した。日本の人権状況については、人質司法、外国人労働者や障がい者の権利侵害などを問題視した。人権侵害からの救済や人権保障を推進する国内人権機関の設立も求めた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

年次報告書「世界人権年鑑2025」
年次報告書「世界人権年鑑2025」

「世界人権年鑑」は、ヒューマン・ライツ・ウォッチが世界100カ国以上の人権状況を調査してまとめた年次報告書だ。

同報告書は、日本には、人種・民族・宗教による差別、性的指向や性自認に基づく差別、年齢に基づく差別を禁止する法律がないこと、国内人権機関がないことを問題視した。

同報告書が指摘した主な内容は次の通りだ。

・刑事司法制度
保釈を認めず、長期の身体拘束をしたうえで弁護士の立会いなしに脅迫・誤導などの取り調べで自白を迫る「人質司法」は大きな問題だ。袴田巌さんに対する再審無罪判決は、日本の刑事司法制度に大改革が必要であることを示している。

・女性の権利
社会規範や社会経済的不平等があり、結婚したカップルの約95%が夫の姓を名乗ることになる。夫婦共通の姓を義務付ける現行制度を変える取り組みが勢いを増している。

・性的指向と性自認
日本の最高裁判所は、トランスジェンダーの人々に法律上の性別認定の要件として不妊手術を義務付ける同国の法律は違憲であるとの判決を下した。しかし、政府は性同一性障害者特例法の改正を遅らせている。

・難民認定率の低さ
法務省は2023年に 難民申請1万3823件を受理した が、難民と認定したのは303人だけだった。

・外国人労働者の権利
政府は6月、 外国人技能実習制度を廃止し、育成就労制度を創設した。新制度では、最終的には移民労働者が1年間働いた後に雇用主を変更できるようになるが、条件があいまいなままであると批判する声もある。

・外国籍の子どもの教育
日本の義務教育法は日本国籍の子どもにのみ適用され、日本に住む外国籍の子どもには適用されない。文部科学省によると、義務教育年齢の外国人の子どものうち、学校に通っていない可能性のある子どもは8600人に上るという。

・障がい者の権利
日本の最高裁判所は、優生保護法は違憲であるとの判決を下し、同法に基づいて不妊手術を受けた人々への賠償を日本政府に命じた。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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