トランプ2.0に日本政府と国内企業はどう向き合うべきか

記事のポイント


  1. 第二次トランプ政権では国際協調を踏みにじる動きが相次ぐ
  2. 大統領令のなかには、その法的効力が問われ、裁判になるものもある
  3. 予測不能な「トランプ2.0」に日本政府と国内企業はどう向き合うべきか

第二次トランプ政権が始まりまだひと月も過ぎていないなか、パリ協定からの離脱、開発・人道支援を担う国際開発庁(USAID)を国務省管轄に変更する計画など、国際協調や国際ルールを重視する人々からすると俄に信じがたい事態となっている。2度目となるパリ協定離脱は以前から予測されてはいた。今般出された大統領令のなかには、その法的効力が問われ、今後裁判になるものもある。予測不能な「トランプ2.0」に日本政府と国内企業はどう向き合うべきか。(国際環境NGOグリーンピース・ジャパン・気候変動・エネルギー担当=塩畑 真里子)

EV政策についてはほぼ予想通り、購入時補助金の打ち切りや公共充電設備事業の停止が通告されたが、下院の承認を経なければ実行できないものもある。

さらに昨年米環境保護局(EPA)が出した2032年までの自動車排出ガス規制についても、今後その規制数値が緩和される可能性が高い。EV補助金の打ち切りも排ガス規制緩和も、EV専業テスラにとっては一見したところビジネス上好ましいものではない。

AIの規制緩和で宇宙開発事業など加速か

おそらくイーロン・マスク氏の目論見は、EV補助金の打ち切りでより打撃を受けるのはフォードやGMなど他社である、ということなのだろう。

排出規制緩和については、テスラは排出権クレジットを大量に保有し、他社にそれを販売して利益を得てきたわけであるが、今後はAI開発の規制緩和を推し進め、自動運転や宇宙開発で稼ぐという意図があるのではないか。

EV普及率が極端に低い日本では理解が浸透していないと常々感じることであるが、EVシフトはガソリンから電気へ、動力源が内燃機関からモーターへ移行するという単純なことではない。

激化する、モビリティの「知能化」を巡る争い

今、世界で起きている競争は、車の「知能化」を巡る競争である。テスラが最先端を走っていたと思いきや、ここに来て中国勢、特にBYDの技術革新には目覚ましいものがある。

今年2月上旬、BYDの王伝福(ワン・チュアンフー)氏は今後販売する比較的低価格なモデルにもAIを使った完全自動運転を導入することを発表した。テスラも今年前半には中国でフル自動運転車両を導入する予定でいたが遅れる可能性があると、「Nikkei Asia」は最近報じた。

車の知能化が進むに伴い電力需要が増大することは必ずしも好ましいことではなく、また拙速なAIの規制緩和も懸念すべきことである。

市民社会組織の立場から環境保護や気候変動への対応に従事している者にとっては、冬の時代、と見る向きもあるかもしれない。米大統領は確かに強大な権限を有している。

しかし、だからといってトランプ氏やマスク氏ら個人の一存で地球規模の気候変動対応を逆戻りさせるようなことが起きることが看過されるわけでもない。

この状況に対抗する動きは必ず起きる。日本の政府・企業関係者も短期的、日和見的にならず、日本の長期的な国益を考える力と日々目の前で起きる課題に機敏に対応する力量を強めることが問われているのではないか。

greenpeacejapan

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

グリーンピースは、世界規模の環境問題に取り組む国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開しています。本部はオランダにあり、世界55カ以上の国と地域で活動し、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に、グローバルで連携して取り組んでいます。執筆記事一覧

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キーワード: #ESG#脱炭素

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