米国におけるCSRの最新の取り組み【戦略経営としてのCSR】

なお、SASB(サステナビリティ会基準機構)が、SEC上場企業に対し、財務インパクトを与えるサステナビリティ情報の開示の義務付けを検討している点は興味深い。潜在的なリスクを抽出し開示させることで企業業績に対するマイナス情報を明確にさせようとするものだ。

■CSRはビジネスチャンスを生むきっかけ
最近は、CSV戦略に重点が置かれるようになった。社会課題解決を社会と企業の共通価値(シェアードバリュー)とし、社会課題解決を通した価値創造を重視し、共有価値の創造を目指すものがCSVだ。事業と社会への貢献を直接連携させ、社会課題解決をビジネスチャンスと捉えることで、各事業部門に落し込む。具体的には、3つのレベルで運営する。

(1)顧客ニーズや社会課題の解決の為に、商品や市場を捉え直しビジネスのチャンスを見つける。
(2)バリューチェーンにおける生産性を再定義し、コスト削減などに寄与する。生産性を上げ、コストを下げつつ、環境変化や労働条件改善に配慮することで持続的な取り組みとする。例えば、効率的なエネルギーの利用がエネルギーコストの削減にも寄与するなど。
(3)クラスター開発 により、ビジネス外でのネットワークを作り、自らがかかわる業界が社会状況をより良くするために貢献する。例えば、アカデミーを作り、顧客を教育することで、システム管理者の人材不足を補うなど。

CSVの推進で大切なことは、どのように取り組むべきか、どこに機会があるのかを模索し続けることである。うまくいかない事例に共通するのは、忍耐強さの不足だ。また、CSVにおける社会課題解決とは、財・サービスへのアクセスが十分ではないアンメットニーズへの対応として位置付けている。
 
米国の主要企業は、これらの取り組みを新興市場開拓の渉外活動の手段と位置付けている。経営戦略の一環として取り組みCSRは新しいビジネスのチャンスを生み出すとの意識に変わりつつある。

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大久保 和孝

株式会社大久保アソシエイツ代表取締役社長(公認会計士・公認不正検査士)。慶應義塾大学法学部卒。前EY新日本有限責任監査法人経営専 務理事(ERM本部長)。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、商工組合中央金庫取締役、セガサミーホールディングス監査 役、LIFULL取締役、サーラコーポレーション取締役、サンフロンティア不動産取締役、武蔵精密工業取締役(監査等委員)、ブレイン パット監査役、他多数の企業等の役員に就任。

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