新アニメ「地球のラテール」が描く、生物多様性回復への道

アニメ「地球のラテール」が2025年秋から地上波のテレビで放送される。ジャイアントパンダやナポレオンフィッシュなど個性的な「絶滅危惧種」との出合いを通して、楽しみながら生物多様性を学ぶストーリーだ。原作の絵本を手がけたのは、ネイチャーポジティブ(生物多様性を回復させること)の達成を目指し、生物多様性の教育事業を展開するCLASS EARTH(クラスアース、東京・中央)だ。

■絶滅の危機にある生きものたちとの出合い

アニメ「地球のラテール」は25年秋にテレビ放送予定だ

アニメ「地球のラテール」の特徴は、ストーリーを通して生物多様性を身近に感じられることだ。

主人公は地球の妖精ラテールと出会い、ラテールの力で生き物に変身する。砂漠から熱帯雨林、海の中まで世界中の生態系を冒険し、アラビアオリックスやキンイロアデガエルといった個性的な生き物たちと友達になる。

しかし、実は彼らは絶滅危惧種だった。友達になった生き物たちを救いたいという想いで、主人公はアースセイバー(地球の守護者)になることを決意する――。

原作の絵本を手がけたのは、生物多様性の教育事業を推進するクラスアースの高岸遥CEOだ。10歳の娘・高岸楓が英語翻訳を担当し、バイリンガルブックとした。印刷には、FSC認証紙を使った。

25年秋にアニメ版では、世界中にいる不思議な生態を持つ生き物たちの姿を、多様な製作陣が魅力的に描き出す。

スーパーバイザーにアニメーション監督の河森正治氏を迎え、キャラクターデザインにフランス人クリエイターのロマン・トマ氏、監修には公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン、東京・港)が参画した。

■「楽しく生物多様性を学んでほしい」

「EARTH SAVER認定式」の様子。左から河森正治氏、Mirei氏、高岸遥氏、滝本麻耶氏

4月22日の「地球の日(アースデー)」に行われた「EARTH DAY in 万博」では、製作陣がトークセッションを開催した。

登壇したWWFジャパン自然保護室海洋水産グループの滝本麻耶パブリック・アウトリーチオフィサーは、「動物にまず興味を持つことが最初。その後に保全や環境保護がある。絵本は子どもたちの『きっかけ』になる」と話した。

原作者の高岸遥CEOは、「今の危機的な生態系の損失の原因を作ったのは子どもたちではない。楽しく、ポジティブに生物多様性を学んでもらうために絵本やアニメを作りたい」と発信した。

公式サイトで、子どもたちをアースセイバーとして認定する取り組みも始めた。「EARTH SAVER(アースセイバー)認定式」では、アースセイバーになった子どもたちに、国産バイオマスとして注目されるライスレジンで製作するペンダントを授与した。

ライスレジンは、海外製が多いバイオマスの輸入CO2コストに着目した試みでもある。耕作放棄地を再生し、日本の水田における生態系の回復を図る。

■ネイチャーポジティブ目指し、企業とコラボも

環境保全に取り組むバイオーム(京都市)とコラボし、楽しみながら生態系を調査するプロジェクトを実施した
https://shojikawamori.jp/expo2025/biome_quest/

ネイチャーポジティブの達成には、企業の参画も欠かせない。本作では、さまざまな企業とのコラボレーションも計画中だ。

河森氏、高岸氏が携わる大阪・関西万博「いのちめぐる冒険」パビリオンは、生態系調査プロジェクトで約250万件の投稿を集めた。世界最大規模の生物調査となっていて、万博終了までに1000万件の投稿を目指している。

■万博会場は生物多様性のホットスポット

生物多様性の象徴として制作された万博の「いのち球」。携帯電話およそ20万台分の「100%都市鉱山」から生まれた金箔が、金沢の職人によって全面に貼られたモニュメントだ

WWFジャパンの滝本氏は、この市民参加型の企画について、「環境保全活動の一番の基礎はまず調査。 特にこの生き物調査はたくさんのデータが物を言う。生き物に関心を持つ機会を広げてくれる」と意義を語った。

滝本氏は続けて、「一方、ここ夢洲は、鳥類で112種、植物で206種の生物多様性の豊かなホットスポットだった。万博では新しい技術や、未来の世界といった光の部分があるが、負の部分もあるということを認識した上で、選択をみんなで考えていく必要がある」と指摘した。

生態系調査のアプリを提供するバイオームの藤木庄五郎代表取締役CEOは、「保全と商業が共存する道を探りたい。万博は生物多様性について議論するのにふさわしい場所だ」と語った。

高岸遥CEOは、「アニメ『地球のラテール』や万博での生態系調査プロジェクトを通して、生物多様性の大切さを発信したい。そのために、企業とも積極的にコラボしていきたい」と意気込みを語った。

【放送情報】
アニメ「地球のラテール」はNHK Eテレにて2025年秋放送予定

※放送予定は変更になる場合がございます

絵本『ラテールとアースセイバー』(フレーベル館)
引っ込み思案な少年カナデは、地球の妖精ラテールと出会い、地球にすむ生きものたちの危機を知ってーー。 巻末にレッドリストカテゴリーや絶滅危惧種の説明が入った、SDGsや生物多様性が身近に感じられる、日本語と英語併記のバイリンガル絵本です。生きもの図鑑&レッドリスト解説付き!
※本書の売上の3%は、環境保全に取り組むWWFジャパンに寄付されます。

<PR> CLASS EARTH株式会社 「地球のラテール」 https://latair.jp/

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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