記事のポイント
- ミャンマーで支援活動に取り組む日本人に男児が生まれた
- 心臓の指定難病である完全大血管転位症(TGA)と診断された
- 治療のため日本に搬送され、クラファンも立ち上がる
ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会(MFCG)代表理事の名知仁子です。6月27日、支援者仲間であるボーダレスミャンマーの犬井智朗さんとミャンマー人のお母さんの間に第3子・信君が生まれました。信君は心臓の指定難病である完全大血管転位症(TGA)と診断され、7月18日に治療体制が整った日本に搬送。必要な資金を募るため、クラウドファンディングも立ち上がりました。(ミャンマー在住医師・気功師・名知仁子)

■14時間の搬送を耐えた生命力
犬井信君(ミャンマー名:Thant Thura Aung・タントゥラアウン)は、6月 27 日、犬井智朗さんとミャンマー人のお母さんの第 3 子として東部シャン州のタンジーに生まれました。信という名前には「どんな困難にも信念を持って、自分と人を信じて生き抜いてほしい」という願いを込めたそうです。
犬井智朗さんは学生時代に難民キャンプで生活した経験から、社会起業家支援サービスを運営するボーダレスジャパンに参画。2017年にミャンマーに移住し、クーデター後も現地にとどまりソーシャルビジネスの支援に取り組んでいます。
信君は生まれてすぐ唇が紫色になり、測定したところ身体の酸素が通常の半分程度の 44%しかありませんでした。すぐに診てもらわないと命が助からないと判断され、酸素吸入だけの状態で救急車に乗り、14 時間かけてヤンゴンにある子ども病院へ搬送されました。
いつ命を落としても不思議でない状況で、14時間もガタガタの道を揺られながら病院に到着したことに本当に驚いています。「生きたい、僕、生きたいんだよ」という信君のエネルギーを感じました。
子ども病院に到着後、超音波検査で TGA と診断されました。この病気は新生児の先天性疾患の一つで、日本では難病に指定されています。左心室から出るべき大動脈が右心室から、右心室から出るべき肺動脈が左心室から出ることで血液の流れに異常が生じ、全身に酸素を行き渡らせるのが難しくなります。
信君はバルーン切開手術を受け、心臓の収縮力を強くする点滴が始まりました。その後10日程で状態は改善し、お母さんのおっぱいも吸えるようになりました。こんな奇跡的なことが起きたのは、子ども病院の医師や看護師の献身的な対応と、信君の両親や親戚の皆さんが「助けたい」という願いを一つにしたことに他ならないからと感じています。
■国を問わず「人間の命は平等」
ミャンマーには、TGAの治療体制が整っていません。7月18日、信君は日本で根本的な治療を受けるためチャーター機で関西国際空港に到着しました。近日中に手術を受ける予定です。
パスポートの発行など搬送に必要な手続きには、吉武将吾駐ミャンマー臨時代理大使や職員の方々にご協力いただきました。多くの方の愛情を感じざるを得ません。
信君と家族をサポートするためのクラウドファンディングも立ち上がり、すでに2400人を超える皆さまから搬送費2000万円を集めることができました。本当にありがとうございます。
しかし、手術後の経過を観たり家族の滞在費を賄ったりするため、まだ資金が必要です。さらに信君の治療に関する費用を超えた分については、信君と同じようにミャンマーで治療を頑張る子どもたちのために寄付させていただきます。
クラファンの詳細は下記のリンクからご覧いただけます。もし、共感してくださいましたら応援をいただけると大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
心臓病の赤ちゃんを救いたい─ミャンマーから日本へ緊急搬送のための支援プロジェクト
国を問わず「人間の命は平等だ」。これは医師として23年間、医療に手が届かない国で「命を守る」仕事をさせていただいた経験から肌で感じていることです。