記事のポイント
- 米NYの国連本部はSDGsの進捗をまとめた10回目の報告書を公表した
- SDGsで定めた169のターゲットのうち、前進したものは35%に過ぎないとした
- 半数近くの進捗はあまりに遅く、18%は後退したと厳しい評価を下した
米NYの国連本部は7月14日、SDGsの進捗をまとめた報告書を公表した。同報告書では、SDGsで定めた169ターゲットのうち、前進したものは35%に過ぎないと厳しい評価を下した。半数近くのターゲットの進捗はあまりに遅く、18%は後退しているとし、残り5年の間に、食料システムやエネルギー、デジタル・トランスフォーメーションなど6つの領域に注力するように呼びかけた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

UN DESA/P. Vasic
国連が公表した報告書の名称は、「持続可能な開発目標(SDGs)報告2025」。今回で10回目となる、SDGsの年次進捗をまとめた報告書だ。報告書で下した評価は厳しく、行動を起こすよう強く呼びかけた。
SDGsで定めた全ターゲット169のうち、「順調に進んでいる」または「ある程度前進している」ものは35%に過ぎないと評価した。一方、半数近くのターゲットの進捗はあまりにも遅く、18%は「後退」しているとした。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「私たちは、開発における緊急事態に直面している」と指摘した。SDGsの目標年まで残り5年で、達成するための課題は多い。
■国連事務総長「SDGsはまだ達成可能」
目標年までに達成するための条件として、グテーレス事務総長は、「緊急性、団結、揺るぎない決意をもって行動すればSDGsはまだ達成可能である」と語句を強めた。
今後、SDGsの取り組みを加速するために特に注力すべき6つの分野を挙げた。その6つとは、「食料システム」「エネルギーへのアクセス」「デジタル・トランスフォーメーション」「教育」「雇用と社会的保護」「気候行動と生物多様性対策」だ。
国連は、これらの重点分野に対応するために、各国政府やパートナーに対し、政策立案に必要なデータシステムの強化を求めた。2024年の国連世界データフォーラムで採択したロードマップ「メデジン行動枠組み」に則り、データシステムの構築が重要だと訴えた。
報告書がまとめた、SDGsの成果と課題は下記の通り。
■再エネの主力電力源や子どもの死亡率改善などが成果に
・2012年から2024年にかけて、5歳未満児の発育阻害の有病率は、4%から23.2%に減少した。
・2000年から2019年にかけて健康寿命は5年超延びたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってこうした平均寿命の延びが一部反転し、8歳短くなった。
・世界の妊産婦死亡率は、2015年の出生10万人あたり228人から2023年には197人に減少した。5歳未満児の死亡率は、2023年には出生1,000人あたり37人となり、2015年の44人から16%減少した。
・2024年末までに、54カ国において少なくとも1種類の「顧みられない熱帯病」が根絶された。
・2019年から2024年にかけて、差別的な法律の撤廃やジェンダー平等の枠組みの確立に向けた99の前向きな法改正が行われた。
・2025年1月1日現在、国会議員に占める女性の割合は2%であり、2015年から4.9ポイント上昇した。
・再生可能エネルギーは、現在最も急速に成長しているエネルギー源であり、2025年には石炭をしのぐ主要電力源となる見通しである。
・5Gのモバイル・ブロードバンドは、現在世界人口の51%に利用されている。
■飢餓は11人に1人の割合、難民も3700万人超に
・取り組みを大幅に加速させなければ、2030年までに世界人口の9%が依然として新しい国際貧困ラインを下回る極度の貧困の中で暮らすことになる。
・2023年には、世界で11人に1人近くが飢餓に直面した。
・2023年には、2億7,200万人の子どもや若者たちが依然として学校に通えなかった。
・女性が行っている無給の家事やケア労働は、男性の5倍である。
・2024年には、22億人が安全に管理された飲料水に不足し、34億人が安全に管理された衛生施設なしで生活し、17億人が自宅で基本的な手洗い設備を利用できなかった。
・2024年半ばまでに、世界の難民の数は3,780万人へと急増した。
・世界では、11億2,000万人がスラム街やインフォーマルな居住地に暮らしており、基本的サービスを受けられていない。
・2024年には、それまで5年連続で増加していた政府開発援助が1%減少し、2025年にかけてさらに削減される見通しである。