記事のポイント
- 気候変動が世界的な食料価格の高騰を招いていることを新たな報告書が示した。
- 報告書は、地球温暖化が進行すれば食料価格の高騰は続くと警鐘を鳴らす
- 食料価格の高騰は、人々の栄養や政治経済に負の影響を与えると指摘した
気候変動による異常気象が、世界的な食料価格の高騰を招いていることを示す新たな研究報告書が出た。環境科学の学術誌「エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ」が発表した新たな報告書は、ネット・ゼロ排出を達成できずに地球温暖化が進行すれば、食品価格の高騰はさらに続くと警鐘を鳴らした。食料価格の高騰による影響は、人々の栄養だけでなく、政治経済にも負の影響を与えるとも指摘している。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

環境科学の学術誌「エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ」は7月21日、気候変動に直接起因する熱波や洪水など16の気象現象を追跡し、それらが食品価格に与えた影響を示す報告書を公開した。
スペインのバルセロナ・スーパーコンピューティング・センターが主導したこの研究によると、世界各地で発生している極端な高温、干ばつ、豪雨、洪水といった異常気象が、ジャガイモ、米、玉ねぎ、レタス、果物、オリーブオイル、カカオ豆、コーヒー豆などの価格高騰を招いている。
「近年、東アジアからヨーロッパ、北米に至る広範な地域で、異常な気象現象が起きている。この背景にあるのが気候変動の影響だ」と報告書の筆頭著者であるマキシミリアン・コッツ研究員は説明する。
「排出量の実質ゼロを達成しなければ、今後も極端な気象はさらに悪化する。すでに作物は破壊され、世界中の食料価格を押し上げている。私たちの研究は、気候変動による食料価格上昇の広範な影響を、社会が真剣に検討しなければならないことを警告するものだ」(コッツ研究員)
研究チームは過去の気象条件との比較の中で、「過去に観測された範囲を超える異常な気象現象」を特定し、2022年から2024年に発生したこれらの異常な気象現象を追跡して食品価格への影響を分析した。
■異常な豪雨・洪水は食料価格の急騰に
例えば2022年8月に国土の3分の1が水没する洪水が発生したパキスタンでは、その後何週間にもわたって、農村部での食料価格が50%高騰した。
イギリスでは、2024年2月、冬の異常な降雨量の増加により1カ月間でジャガイモ価格が22%急騰した。
オーストラリアでは2022年2月から5月初旬にかけての洪水の影響で、同年6月のレタスの価格は前年から4倍に高騰した。
■干ばつが世界各地で農作物に打撃を与える
干ばつによる作物の影響は、世界各地でより広範囲で見られる。
スペインは世界全体のオリーブオイル生産量の4割以上を占める。2022年から2023年にかけてスペインやイタリアなど南欧では前例のない干ばつが発生した。その影響で、2024年1月までにEU全体のオリーブオイル価格は、前年から50%高くなった。
米国では、2022年にカリフォルニアやアリゾナ州で前例のない干ばつが発生した。カリフォルニアは米国の野菜の主産地だ。干ばつの影響で、2022年11月までの1年間で、米国野菜生産者価格が80%上昇した。
エチオピアは2022年、深刻な干ばつにより壊滅的な影響があった。複数の州では3年連続で雨季に雨が降らず、井戸は枯渇し、家畜は息絶え、作物は枯れ、数十万人が危機に瀕した。この干ばつの影響によって、2023年3月には食料価格が40%上昇した。
■生産地の異常気象は世界に影響する
■2024年の熱波は日本の米、韓国の白菜価格にも影響した
■温暖化の進行は、食品価格のさらなる進行に