プラスチックのリサイクルはクルマ中心で良いのか

記事のポイント


  1. 再生プラスチック利用をめぐる動きが国内外で加速している
  2. 日本でも資源有効利用促進法が改正され、再生プラ利用が義務付けられた
  3. 自動車もその対象だが、経済全体でプラの高度な循環利用が進むのか

雑誌オルタナ82号:論考・サーキュラーエコノミー(29)

今、再生プラスチック利用をめぐる動きが国内外で加速している。2029年からの実施を目指したEUの新ELV規則案では、新車に部材として含まれるプラスチックのうち再生プラスチックの割合が20%、そのうちの15%が使用済み自動車由来であることが求められている。

日本でも今般、資源有効利用促進法が改正され、再生材、特に再生プラスチック利用が義務付けられた。その施策対象として自動車、家電製品、食品や医薬品を除く容器包装(PETボトルは対象)が挙げられた。

こうした動きはおおむね頷けるが、首を傾げたくなる点もある。そもそも、EUの新ELV規則案で提示された再生プラスチック利用率の20%、15%という数字がどのような理論的・実証的根拠から計算されたのか、筆者には皆目見当がつかない。

クルマを中心にプラ資源のリサイクルを制度化すれば、経済全体でプラスチックの高度な循環利用が進むという理由があるのだろうか。

プラスチックは産業や生活のあらゆる部分に複雑に入り込み、産業連関構造も極めて込み入ったものになっている。以上に挙げた3品目以外にも、産業機械、電子機器、OA機器、日常の生活用品、食品・飲料容器包装など、さまざまな業種にプラスチックは行き渡っている。

だとしたら、再生プラスチックがどのように、どれくらい利用され得るのか、また利用されるべきなのか並行的に検討されて然るべきだろう。そうしないと、上質の再生プラスチックのかなりの部分がクルマに吸収されることにもなりかねない。需給バランスが崩れ、施策対象外の他の業種では再生プラスチックの調達が難しくなることも予想される。

■ 再生プラ価格、外部環境の変化で不安定に

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eijihosoda

細田 衛士(東海大学学長補佐、政治経済学部経済学科教授)

東海大学学長補佐、政治経済学部経済学科教授。1953年生まれ。77年慶応義塾大学経済学部卒業後、同大学経済学部助手、助教授を経て、94年より教授。2001年から05年まで同大経済学部長を務めた。中央環境審議会委員や環境省政策評価委員会委員なども歴任した。

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