記事のポイント
- NPOの調査によると、国内のケージフリー鶏は1.48%でOECD最低水準に
- ケージフリーへの関心は高まるが、供給量や生産ポテンシャルの把握に課題も
- 安定供給の実現には、企業側のニーズ公表とコミットメントが不可欠だ
認定NPO法人アニマルライツセンター(東京・渋谷)がこのほど実施した「ケージフリー羽数実態把握調査」によると、国内のケージフリー鶏は1.48%で、OECD加盟国中最低の水準だった。供給規模や生産ポテンシャルが不明確なため、企業は調達の見通しを、生産者は需要の確信を持ちづらい状況にあるとみられる。安定供給の実現には、卵製品を調達する企業側のニーズの公表と、将来ケージフリー卵に切り替えるというコミットメントが不可欠だ。(社会課題ライター=川原莉奈)
世界では、アニマルウェルフェア(動物福祉)を重視した「ケージフリー飼育」が急速に広がっている。欧州や米国だけでなく南米やアジアを含む食品企業や小売チェーンの多くが、2025〜2030年までにケージフリー卵への切り替えを目標に掲げている。
こうしたなか、認定NPO法人アニマルライツセンターが、日本全国の採卵鶏の養鶏場のうち916戸を対象に「ケージフリー羽数実態把握調査」を実施した。
その結果、国内でケージフリーで飼育されている鶏の割合は1.48%で、2023年の調査時から0.38%増えた。ただし、当時は全体の飼育羽数が現状より多かったため増加率には誤差があるといい、依然として「OECD加盟国中最下位の水準であることは明白」(同法人)と指摘する。
ケージフリーへの切り替えが遅れている要因として挙げられるのが、ケージフリー飼育の実態が公的に把握されていないことだ。供給規模や生産ポテンシャルが不明確なため、企業は調達の見通しを立てにくく、生産者も需要を確信しづらい状況にある。
一方、国内でもアニマルウェルフェアへの関心は高まりつつあり、企業・行政・市場がケージフリー化に向けて動き始めている。安定供給の実現には「卵製品を調達する企業がニーズを公表し、将来ケージフリー卵に切り替えるというコミットメントが不可欠だ」(同法人)としている。



