欧州発の循環経済を推進する「エレン・マッカーサー財団」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(45)

1.ビジネス(経済循環のイノベーションの触媒として機能する)
同財団は、「サーキュラー・エコノミー」を達成するにはパラダイムシフトが必要とされ、活動の鍵となるのは企業で、ビジネスを変えることで多くの事を達成することができるとしている。ビジネスのイノベーションこそ、サーキュラー・エコノミーへの転換の中心に位置するものとし、主要課題への対処を加速するために、グローバルパートナー(ユニリーバ、シスコシステムズ、フィリップス、ルノー、キングフィッシャー)と協働している。

グローバルパートナーは、それぞれの社内でサーキュラー・エコノミーのプロジェクトを実施し、同財団は、社内セミナー等の教育を提供、プロジェクトの分析も実施している。またオープン・ダイアログやワークショップも頻繁に実施し、プロジェクトの効果を確認している。これらパートナー企業は、グローバルに活動する各産業のリーダーであるので、役割は非常に重要であり、サーキュラー・エコノミーのイニシアティブをグローバルに展開している。

サーキュラー・エコノミー100(CE100)
2013年2月同財団は、グローバルパートナー(前述)のサポートを受けて、サーキュラー・エコノミー100(CE100)という世界で最初のサーキュラー・エコノミーのイノベーションプログラムを立ち上げた。

このプログラムには大企業だけでなく、公共団体、地域組織、大学、社会的企業が参加し、これら組織が共通する問題に対処するために、実践的なパイロットプログラムや能力構築を提供するとともに協働しやすい環境を整えている。

CE100を推進する上で重要なのは、企業がビジネスの中で「サーキュラー・エコノミーの原則」に沿って行い、企業のビジネスの中核として行われるべきものであることである。同財団のエグゼクティブ・オフィサーのジョセリン・ブレリオ氏は、「企業が通常のやり方で生産をしていて、消費者にだけ持続可能な消費を実施しろというのは正しい方法とは言えない。持続可能な消費を促すためには、持続可能な生産が必要となる。まず企業が持続可能な生産システムを作ることが必要だ」と話す。

当初3年間のプロジェクトとしてスタートしたが、メンバー企業からの要望もあり、その後も継続して行っていくプロジェクトとなっている。現在会員数は95で、100になったらその後増やす予定はないという。

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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