オルタナ総研統合報告書レビュー(52):ANA

記事のポイント


  1. ANAは、非財務と財務のつながりを可視化する「価値関連性分析」を行った
  2. アビームコンサルティング社の「Digital ESG Platform」を活用した
  3. 人的資本施策が経済的価値向上に直結していることが判明した

ANAホールディングスは、非財務と財務のつながりを可視化するため、非財務にかかわる施策が経済的価値の向上にどのようなインパクトパス(価値の経路)でつながっているか、価値関連性分析で検証しました。人財・環境・人とモノのつながりの3つの領域で実施した結果、人財の領域において、人的資本施策が経済的価値につながることが特定できました。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

ANAホールディングスは、アビームコンサルティング社の「Digital ESG Platform」を活用し、「価値関連性分析」を行い、人的資本と企業価値の因果関係を定量的に可視化しました。

「価値関連性分析」とは、非財務・財務の各指標の相関関係を統計的に分析し、企業価値向上に至る一連の価値連鎖を可視化・検証する手法です。

同社が実施する「働きやすい職場づくり」や「変化に強い組織づくり」などの人材施策が実際の経済的価値の向上にどうつながっているのか確認すべく、「価値連鎖の道筋となるストーリー(関連性)全体像の可視化」「企業価値(PBR)向上への相関関係分析」を行いました。

その結果、同社が重視する従業員エンゲージメントの向上やグループ行動指針「ANA’s Way」の体現が、価値連鎖の重要なハブとして機能していることが明らかになりました。

加えて、チームワークの醸成や現場従業員の専門スキルの向上などが、基本品質・生産性・顧客満足度を押し上げ、最終的に売上・利益・株価などの経済的価値に連関していることが定量的に実証されました。

価値関連性分析の具体的なステップは、次の3ステップです。

① 非財務の施策から財務価値までの価値の連鎖を仮説として描く
② 仮説を検証するため、それぞれの価値を測定する指標の過去データを収集(人財領域では520種類、平均取得年数9.8年)
③ 指標同士の相関関係を分析し、統計的に有意な相関が確認できた価値をつなぎルートを可視化

各分析に使用した指標例は次の通りです。

  • 人財施策の分析:「研修/訓練時間」「研修/訓練コスト」「柔軟な働き方の制度利用者数」「各種イベント参加者数」「1人当たり人件費」「女性管理職比率」「時間外労働時間」など。
  • 直接的な効果分析:「資格保有者数」「資格保有率」「新規事業創出数」「離職率」「復職率」「カイゼン提案件数」「社員1人当たり生産量」など。
  • 間接的な効果分析:「ANA’s Way Survey」「SKYTRAX NPS・CXサーベイ」「お客様からのお褒め・お叱り件数」「運航リスク発生率」「就航率」「定時出発率・到着率」など。
  • 経済的価値分析:「売上高」「PBR」「ROE」「PER」「EPS」「営業利益」「営業利益率」「自己資本比率」など。

3ステップならびに各指標を図式化すると下図になります。

「人的資本の強化による企業価値向上へのつながり(価値関連図)」
「人的資本の強化による企業価値向上へのつながり(価値関連図)」

価値関連性分析結果は、統合報告書では、「人的資本の強化による企業価値向上へのつながり(価値関連図)」として掲載されています。

次の統合報告書では、「価値関連図」に加え、「価値関連ストーリー」として開示されてはいかがでしょうか。

muroi

室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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