記事のポイント
- 日本の化石燃料依存の経済リスクを定量的に評価した報告書が公開となった
- 原油価格が2割上昇すれば、実質GDPは5年で約7兆円押し下げられる
- 原油の供給が半減すれば、名目GDP相当額は約12兆円押し下げられる
化石燃料への依存を続ける日本の構造が、経済に数兆円規模のリスクをもたらすことが明らかになった。SOMPOグループのシンクタンクと日本若者協議会が7月23日、化石燃料へのリスク依存を可視化したレポートを公開した。報告書は、日本の化石燃料依存は、イラン情勢に直面した際に産業競争力の低下と国民生活の圧迫という大きな危機をもたらし、構造的に脆弱性を抱えている、と指摘する。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

SOMPOグループのシンクタンクであるSOMPOインスティチュート・プラス(東京・新宿)と日本若者協議会(東京・品川)は7月23日、「化石燃料依存リスク可視化レポート~危機対応から危機回避へ」を公表した。
産業連関分析および内閣府の経済財政モデルなどを用いて、化石燃料依存の経済リスクを定量評価したものだ。化石燃料に依存した日本のエネルギー構造が抱える脆弱性を具体的な数字で示し、政府が繰り返して行ってきた補助金政策が、むしろ構造転換を遅らせ、社会全体に損失をもたらしていると指摘する。
本報告書を監修したポスト石油戦略研究所(東京・千代田)の大場紀章代表は、「史上最大の化石燃料供給危機が実際に起きたにもかかわらず、化石燃料供給に頼り続けることのリスクについての議論が大きなうねりになっていない」とコメントした。
「本レポートは、原油2割高で5年約6.8兆円、供給5割減で約11.9兆円という損失規模を、しかも低所得世帯ほど重く被ることを数字で示した。補正予算3.1兆円のうち約3兆円が価格支援に向かい、構造転換への配分が限られたという指摘も重い。議論の土台として広く読まれることを期待したい」(大場代表)
■原油供給が半減すれば11.9兆円の損失に
日本のエネルギー自給率は2024年度時点で16.3%に留まり、一次エネルギー供給の8割以上をいまだに化石燃料に依存している。特に原油の中東依存度は際立って高く、この地理的な集中が、今回のイラン情勢で有事の際のリスクとして浮き彫りになった。
報告書は、原油価格が20%上昇した状態が5年間継続した場合、日本の実質GDPを累積で約6.8兆円押し下げるとの試算を紹介する。
さらに深刻なのは、ホルムズ海峡の封鎖などで物理的に原油の供給が途絶されることだ。報告書は、原油供給が50%減少した場合、石油製品や化学、輸送、鉄鋼といった広範な産業で生産が制約され、名目GDP相当額(粗付加価値)を約11.9兆円押し下げる可能性があるとまとめる。
こうしたリスクは、日本の製造業の国際競争力にも慢性的な圧力として作用する。EUの炭素国境調整措置(CBAM)のように、炭素価格が低い国からの製品に負担を強いる規制が本格化する中で、化石燃料に依存し続けることは、日本の輸出企業がサプライチェーンから締め出されるリスクを意味するからだ。
■ガソリン補助金は社会全体として3778億円の損失に
■低所得層を直撃する「逆進性」の矛盾
■「エネルギーの自立性強化」を求める

