ウナギの危機は変わらない

つまり2014年から2015年にかけて、シラスウナギはこれまで同様、取り放題の状況だったということになる。

しかも「シラスウナギの池入れ量をコントロールすればいい」というのが水産庁の姿勢だったために、不透明なシラスウナギの国際取引や国内での密漁の規制などは手つかずだった。「これまでと別に何も変わらなかった。変わったといえば、昨年よりシラスが捕れなかったことだ」というのが、ある漁業者のつぶやきだ。

ウナギを危機的な状況に追いやった日本の「薄利多売ビジネス」と、丑の日を中心にした廉価ウナギの大量消費も、これまでとほとんど変わらなかった。北里大学の研究グループが行っている遺伝子調査では一部の大手の製品を含め、依然として多くのヨーロッパウナギが国内市場に流通していることが今年も確認された。

輸出が禁じられてから5年近くが経つにもかかわらず、大量のヨーロッパウナギが日本に直接、あるいは中国経由で大量に輸入されている実態も変わっていないようだ。

丑の日前後には相変わらずコンビニやスーパーに大量の廉価ウナギが並び、これまでの季節限定商品だった「鰻丼」をやめ、最大3枚盛りの「鰻重」の通年販売を始めた外食大手、吉野屋のような業者まで現れた。

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井田 徹治(共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

記者(共同通信社)。1959年、東京生まれ。東京 大学文学部卒。現在、共同通信社編集委員兼論説委員。環境と開発、エネルギーな どの問題を長く取材。著書に『ウナギ 地球 環境を語る魚』(岩波新書)など。2020年8月からオルタナ論説委員。

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