企業の人権に関する法制化のゆくえ――下田屋毅の欧州CSR最前線(49)

このようなソフトローと呼ばれる国際的な基準の制定とともに、法規制の動きがある。大きな流れとしては、国連の条約による法制化で、2014年6月、国連で多国籍企業による人権侵害を食い止める動きとして、「国際的な条約締結による法制化へ向けた国連の作業部会の設置」の決議26/9がなされ、議論が始められている。

■世界で進む法制化の流れ
個別の法規制の動きとしては、以下のように進んでいる。

米国では、2010年、米国ドッド・フランク法の第1502条(企業に紛争鉱物の使用の有無を報告することを求めるもの)が制定され、2012年にはカリフォルニア州サプライチェーン透明法(企業に販売する製品の直接のサプライチェーンから、奴隷と人身取引を撲滅する取り組みをウェブサイトに公開することを求めるもの)が制定された。

英国では2013年、英国会社法の改正(上場企業に毎年の報告書で人権に関する報告を義務付けるもの)、そして、2015年3月には英国「現代奴隷法2015」(企業にサプライチェーン上の奴隷制を特定させ根絶するための手順の報告を求めるもの)も制定された。

また、今後欧米各国で次々に法律が制定されていく流れがある。例えば米国においては、カリフォルニア州サプライチェーン透明法を米国全土への拡大を図ることが審議され、フランスの法制立案では、企業のサプライチェーンのデューディリジェンスを実施するよう求めるとともに、企業への罰則も審議されている。EUでも紛争鉱物の提言が2015年に欧州議会に提出され、審議されている。

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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