「製鉄所の輸入石炭、採掘時のメタン排出は国内エネ部門の4倍」英研究

記事のポイント


  1. 石炭は、燃焼時に大量のCO2を出すが採掘時には大量のメタンを排出する
  2. 英シンクタンクは、国内製鉄所の輸入石炭の採掘時のメタン排出量を試算した
  3. メタン削減こそ「低コストでできる即効性のある気候対策」と国連

英シンクタンクのエンバーは2026年10月1日、日本の製鉄所が輸入する石炭の採掘時に発生するメタンに関する調査レポートを発表した。2024年に国内11基の高炉が搬入した石炭に伴うメタン排出量は、日本が報告する国内エネルギー部門全体の4倍超に上ると試算する。国連機関や機関投資家は、このメタン削減こそ、低コストでできる即効性のある気候変動対策だとし、サプライチェーン上の透明性確保を求めている。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

石炭の採掘時には、大量の温室効果ガス・メタンが発生する

気候変動対策において、二酸化炭素(CO2)の数十倍もの強力な温室効果を持つメタンの削減が、地球温暖化の急速な進行を食い止める切り札として、世界的な最優先課題に浮上している。そうしたなかで、日本の製鉄業のサプライチェーン上流に、これまで可視化されてこなかった「見えないメタン排出」が膨大に存在することが明らかになった。

エネルギーシンクタンクの英エンバーが2026年10月1日に公開した最新レポート「メタンにラベリングは通用しない(原文: Methane doesn’t read the label)」によると、2024年に日本国内の11基の高炉製鉄所に搬入された石炭(原料炭・製鉄用炭)は、海外の炭鉱で採掘される過程で大気中に推計308キロトンのメタンを排出していたとする。

 (ご参考)エンバーの報告書(日本語版サマリー)はこちら

この308キロトンのメタン排出量は、一般的な100年間の地球温暖化係数(GWP100:CO2の約30倍)で算出するとCO2換算で約910万トン(9.24Mt CO2e)に相当する。さらに、メタンが放出後最初の20年間に及ぼす短期的な強力な温暖化効果(GWP20:CO2の80〜84倍)で重みをつけてCO2換算した場合は約2500万トン(25.4Mt CO2e)に膨らむ。

これは、日本政府が国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)に基づいて国家インベントリ(排出目録)として報告している国内エネルギー部門全体のメタン排出量(約67キロトン)の約4.6倍に相当し、国内の廃棄物分野から発生するメタン全体の2倍を超える。日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所といった国内大手の高炉メーカー3社が2024年に輸入した合計5450万トンの石炭全体に伴う、環境への負荷とも言い換えられる。

個社別で見ると、最大手の日本製鉄が全国7つの製鉄所で受け入れた3300万トンの石炭から発生するメタンは182キロトン(GWP20ベースでのCO2換算で1500万トン相当)に上る。

エンバーの報告書は、仮にこの採掘時メタンを日本製鉄のスコープ3(サプライチェーン排出量)のカテゴリー1および3に加算した場合、従来の100年ベースの算出でもスコープ3排出量は約46%増加し、20年ベース(GWP20)で評価した場合にはスコープ3排出量が2倍以上に跳ね上がると試算した。

日本製鉄が輸入した石炭について、採掘時のメタン排出量を同社のスコープ3排出量(カテゴリー1および3)に加えた場合の図
(上が100年ベース、下が20年ベースでの評価)
(出典:Ember)

■石炭は、採掘時に多くのメタンを排出する

「石炭の燃焼が地球温暖化の最大の要因であることは広く知られつつあるが、石炭に関しては、もう一つ注目されていない事実がある。それは、炭鉱がメタンの主要な排出源となっているということだ」

エンバーの炭鉱メタンアナリストのユーティン・チャン氏は、2026年9月24日(日本時間)、エンバーが開催したメディア向け説明会の冒頭、こう説明した。

「石炭は、有機物が数百万年にわたって埋もれ、分解されることで形成される。圧力と熱によって炭層へと変化する過程でメタンが発生し、石炭やその周囲の岩石の中に閉じ込められる。採掘によって炭層がかく乱されると、そのメタンの多くが逃げ出す。そして、炭鉱が閉鎖・放置された後も、何十年にもわたって排出が続くことがある」(チャン氏)

「メタンは非常に強力な温室効果ガスであり、100年間のスパンではCO2の約30倍、20年間のスパンでは約80倍の温室効果がある。世界全体で見ると、炭鉱からのメタン排出はエネルギーセクター全体の約3分の1を占めており、ガスセクターよりも多いにもかかわらず、議論される機会ははるかに少ないのが現状だ」(同)

「日本は2024年、石炭の99.7%を輸入しているが、そのうち5450万トンが国内11基の高炉製鉄所に供給された。その石炭を採掘する際に放出されたすべてのメタンは、オーストラリア、インドネシア、カナダなど他国の領土で排出されたものだ。日本の国家インベントリ(排出目録)にはゼロとして計上され、まったく表れない」(同)

本報告書は、日本が輸入する石炭の採掘時に放出されるメタンは、本来、誰かが計上すべきであり、日本がすでに輸入LNGで実施している開示イニシアティブと同様の取り組みから始めることを提言した。

■「1%未満のコストで実現する、今すぐできる気候対策」と国連
■製鉄のメタン排出は「財務・経営リスク」と機関投資家

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #脱炭素

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