オレンジの色鮮やかな野鳥――ジョウビタキと白い斑点

東京でも、公園や並木などで気を付けていると、特にオスは、決して観察のむずかしい野鳥ではない。オレンジ色の腹部や銀白の頭頂部の他、とまっているときは、たたんだ翼の中ほどの白い部分がよく目立つ。この部分は、羽織の紋のようにも見えることから、モンツキドリ(紋付き鳥)とも呼ばれて親しまれてきた。

バイカル湖の西岸からヨーロッパにかけては、近縁のシロビタイジョウビタキが分布する。見た目はジョウビタキとよく似ているが、この白い部分がないことが、識別にあたっての大きなポイントだという。

メスは頭頂部も含め全体に地味な色合いだ。オスと同様、翼の白斑が目立つ(東京港野鳥公園にて)
メスは頭頂部も含め全体に地味な色合いだ。オスと同様、翼の白斑が目立つ(東京港野鳥公園にて)

かつて両種は、同一の種に属していて、いつの頃からか地域的な差が現れ、亜種として、そして種として、それぞれに遺伝的特性を備えるようになったのだろうと考えられる。彼ら自身は、どのように自分たちの仲間を識別し、また伴侶を見つけているのだろうか。

また、ジョウビタキにとっては、この白斑はどんな意味があるのだろうか。

そう思うと、「紋付き鳥」の見慣れた白斑も、生物多様性の源泉の一つである種や亜種の分化の謎に思いを巡らすきっかけとして、新たな興味をかきたてる。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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キーワード: #生物多様性

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