3大金融グループの化石燃料関連企業への投融資実績を見ると、石炭火力発電を始めとする大量の二酸化炭素排出量を生み出すセクターへ膨大な資金提供を国内外で行っていることが浮き彫りになっています。
これに対して、三井住友信託銀行とりそなホールディングスは、気候変動に配慮する方針の一環で新規の石炭火力発電プロジェクトには原則取り組まないと発表し、3大グループより前進した取り組みを打ち出し、邦銀をリードしています。
国際環境NGO 350.org の日本支部(350.org Japan)が9 月に発表した報告書「民間金融機関の化石燃料及び原発関連企業への投融資状況2018」では、2015 年のパリ協定合意以降、3 大金融グループが国内の石炭火力発電所の新設計画に携わっている企業への資金提供を増加させている事実を掲載しました。
2013 年1 月から2018 年7 月まで、3 大金融グループは、特定の石炭開発に携わる日本企業19 社に対して総額約250 億ドル(約2.8 兆円)の融資・引受を提供していました。
さらに、金融グループは特定の石炭開発関連企業の債券と株式に総額約29 億米ドル(約3290 億円)の投資も確認されました。
日本の3 大金融グループは石炭火力発電所の新増設計画に最も携わる世界TOP120社への投融資実績でも世界的に上位であることも明らかになっています。
2014 年1 月から2017 年の9 月まで、特定120 社の石炭関連企業への融資総額で、みずほは世界1 位(約115億ドル)、MUFG は世界2 位(約102 億ドル)、SMFG は5 位(約35 億ドル)という事実も判明しました[2]。
今年の国連気候変動会合(COP24)で発表される予定の「銀行×パリ協定」の調査レポートのアップデート版では、再び邦銀はパリ協定に逆行する形で、石炭火力発電の促進を支える存在として取り上げられる可能性が高いです。
上記の投融資実績を踏まえ、3 大金融グループの事業戦略は「パリ協定の目標達成に反する」と評価されてしまうのが当然で、世界の流れを受け止め、石炭火力発電事業への新規投融資を停止すべきです。
PRB が銀行に対して求める国際社会が定めたゴールに整合する銀行業務を行うよう、邦銀を代表する三大金融グループにも「脱炭素化」に向けた舵取りが期待されます。
[1] UNEP 2017, ‘The Emissions Gap Report 2017 – Bridging the gap – Phasing out coal’, p47.
[2]Banks v The Paris Agreement, 2017 :
https://www.banktrack.org/coaldevelopers/#rankings
古野真(ふるの・しん)
国際環境NGO350.org 日本支部350.org Japan 代表。民間金融機関に対してパリ協定の目標達成に向けてポートフォリオの「脱炭素化」を求める市民型ダイベストメント運動の第一人者。NGO セクターに携わる前にはオーストラリア政府の環境省で課長補佐として気候変動適応策を推進する国際協力事業を担当。気候変動影響評価・リスクマネジメントを専門とする独立コンサルタントとして国連開発計画(UNDP)、ドイツ国際協力公社(GIZ)や一般社団法人リモート・センシング技術センターのプロジェクトに参加。クイーンズランド大学社会科学・政治学部卒業(2006)、オーストラリア国立大学気候変動修士課程卒業(2011)。