さて、このような中で経営者はどう対処すべきでしょうか。まずは17目標からビジネスチャンスとリスク回避の両面で企業経営を強化します。SDGs は世界でグローバル企業がけん引する中で、これを活用しなければ国際入札をはじめ世界市場で蚊帳の外に置かれていく危険性があります。
もう一点重要なことがあります。SDGs は自主的取り組みが基本である、ということです。地球規模の危機的状況に向けて、やれる人がやれるところからすぐにも着手しようというルールです。
実は、このルールは怖い。どんどん差がつくからです。ぼーっとしていれば置いておいていかれる。日本が欧米に置いていかれる、日本でもSDGs 仲間から置いていかれる、といったことになります。
ルールが変わったことに気が付くべきでしょう。これまでの日本特有の横並び思考や「護送船団行政」の残影から抜け出して、すぐにも自社は何をすべきか考えなければいけないのです。
SDGs 策定からすでに4年も経ちました。一刻も早くSDGsの「解読作業」を終えて着手すれば、今なら、ぎりぎり、調達などのルールがSDGsで決まった2020年の「SDGs 五輪」や2025年の「SDGs万博」の準備に間に合います。
以上の問題意識の下で、どのようにSDGsを経営に入れ込んでいくのかについて具体策を示したのが、笹谷 秀光 (著)の新刊「Q&A SDGs経営」(日本経済新聞出版社)です。
SDGsを経営に実装する手順を、①社会課題に関する社内共通認識の醸成、②重点事項の選定、③目標設定と進行管理、④経営戦略の構築、⑤発信等のすべての経営プロセスについて、中堅から大手まで多くの企業事例を交えて説明しました。
特に、これまでのISO26000(社会的責任に関する手引き、2010年発行)によるCSR、ポーター教授らのCSV、ESGとの関係などを整理し、新たなサステナビリティ・マネジメント体系を示しています。
これを廃プラ、パーム油、水産物認証や石炭火力のダイベストメントなどの最新の課題にも触れつつ、実際の経営課題に応用しています。
日本企業はもともとSDGs的な素地がある企業が多いので、世界の共通言語SDGs の解読を終えれば、すぐに当然こなすべき項目の「規定演技」に対応できます。その上で、自社の特性を生かしてアピールする「自由演技」を進めていくポテンシャルの高い日本企業は多いと思います。新刊がそのヒントになれば幸いです。
笹谷秀光
CSR/SDGsコンサルタント 社会情報大学院大学客員教授
東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年伊藤園入社、取締役、常務執行役員を経て、2019年4月退社。2019年4月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『 経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019年)。笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし(https://csrsdg.com/)