NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「スカーレット」で話題の信楽(しがらき)では徹底的に各種制度を活用している。今後、様々な制度や先人の知恵を統合していくときに役立つのが共通言語SDGsである。陶芸の町、信楽を参考に今後の日本のSDGs的なポテンシャルを探る。(CSR/SDGsコンサルタント/ 社会情報大学院大学客員教授=笹谷秀光)
■制度活用:日本遺産
駅に置いてあった「信楽たぬきの日」のパンフレットの下部には日本遺産のロゴがある。
信楽は2017年度の日本遺産に登録された「日本六古窯(にほんろっこよう)」の一つだ。日本六古窯は中世から今日まで引き継がれている焼き物の産地、「備前・瀬戸・常滑・越前・丹波・信楽」の全国6か所の総称である。
日本遺産制度は、インバウンドも含め世界にも遡及できるストーリー性のある日本の遺産(レガシー)を認定する文化庁による制度で、現在83件。五輪パラリンピックまでに100件程度まで増やす予定だ。この「ストーリー」というところが現代の体験型の時代にマッチしている。
日本六古窯は「STORY #050」であり、「きっと恋する六古窯-日本生まれ日本育ちのやきもの産地-」という題名だ。
この日本遺産のサイトはよくできている。6産地の案内があるが、信楽の解説は次の通りだ。
面積:481.62km²、総人口:91,306人(甲賀市・2017年2月現在)、気候:平均気温 12.3℃、年間降水量 1,723mm(2017年)、名産:窯業、薬、朝宮茶、土山茶ほか、やきもの事業所数:79、就業人数:486人(2016年、(全盛期[1992年12月]の事業所数:135、就業人数:1303人)、古く甲賀は、「鹿深」「甲可」と書き、いずれも「カフカ」と呼称。信楽は、『正倉院文書』に「信楽」と表記されている。甲賀流忍者発祥の地。
信楽の所在する甲賀市(こうかし)のホームページには、日本遺産に認定されたストーリーを構成する次のような文化財の一覧が示されている。こうした文化財や関連する地域資源を活用し、地域活性化を図る。
信楽焼窯跡群、信楽焼、古信楽、江戸時代の信楽焼、近代信楽焼製品、岡本太郎作品(信楽の技術に注目した岡本太郎は、信楽で大阪万博のシンボル「太陽の塔」の背面の「黒い太陽」など作品の制作を行った。太陽の塔の顔レプリカや今も人気を博している《坐ることを拒否する椅子》は信楽伝統産業会館で常設展示されている)、古琵琶湖層、信楽たぬき(昭和26年(1951年)、昭和天皇が行幸された際に、信楽たぬきを並べて奉迎した。これが報道を通じて注目されて信楽たぬきは全国的に知られるようになったといわれる)、窯元散策路(信楽の町は産業景観、なかでも伝統産業によって形成される集住・産業・街区景観である)、信楽火まつり、陶器市
岡本太郎や信楽たぬきも構成要素に入っているところが興味深い。信楽にかかわる事柄の総棚卸が行われているといえる。
日本六古窯なので、信楽焼での取り組みは、今後、他のやきものの町にも波及していく。 SDGs 原則の一つである「普遍性」に期待ができる。つまりベストプラクティスの水平展開が行いやすい。
なお、甲賀市は甲賀流忍者発祥の地でもあり、もう一つの日本遺産にも指定されている(「忍びの里 伊賀・甲賀~リアル忍者を求めて~」)。
■近代化産業遺産