長野県知事「気候非常事態」と「ゼロカーボン」を語る(下)

■「まっとうな危機感」の共有

――この宣言を県民の間や企業にどう落とし込んでいくのでしょうか。

阿部知事: そこが一番重要だと思います。私自身は相当強く危機感を持っていますが、多くの人たちが同じような危機感を持っているとはいえません。まず危機意識を共有するところから始めないといけない。県庁内でも、正確な危機意識の共有を呼びかけています。

まず、データや資料を県庁内でしっかり共有する。県民の皆さんに対し煽りすぎてもいけません。と言って「今のままで大丈夫」と言ってもいけないので、まっとうな危機感をどう共有するかがまず重要だと思います。

長野県は環境の分野では、まだ不十分とはいえ、他の都道府県に比べて様々な取り組みを進めてきた県だと思います。それをさらに深掘りし、具体的な成果につなげていくということが重要です。

例えば「信州屋根ソーラーポテンシャルマップ」など、これほど広い面積でのマップは世界的にも珍しい。良いことをやっているのだから、ちゃんとアピールしていかなきゃいけない。それを県民の皆さんに見ていただくことが重要です。

建築物の環境エネルギー性能の検討制度や、事業者への温暖化対策計画書の策定、小水力発電のキャラバン隊などの取り組みについても、全体を見渡すなかでより深掘りしていく。例えば「検討」の義務づけではなく、義務化も視野に入れるなどの取り組みも進めていきたいです。

■楽しみながら、主体的な活動をしてほしい

人に「やれ」と言うだけでなく、県庁自体のあり方も変わらないといけません。今までの取り組みをさらに発展させることや、人々を巻き込む上でまっとうな危機感を多くの人と共有していくことなどが必要です。

人は気付けば変わる。特に長野県の人たちは、「具だくさんみそ汁運動」のように、健康づくりに関して行動を起こしてきた実績もあります。

最近、大学生と対談する機会がありました。SDGs(持続可能な開発目標)について、彼らは「やらなきゃいけないからやるだけでなく、楽しみながらやることも必要」と言っていました。だから危機感を煽りすぎるのではなく、まっとうな危機感を持ってほしい。

エシカル消費など、一人一人の行動と意思で、よりよい社会を選んでもらえるようなサポート、それも辛い選択ではなく、より自分たちが楽しみながら、自分たちの地域を盛り立てることを主体的に活動してもらうことが大切です。

 

長野県知事「気候非常事態」と「ゼロカーボン」を語る(上)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #SDGs

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