「気候危機」の生々しさを写真で伝える

■ 懐疑的だった住民に変化も

もう1人の受賞者はピューリツァー賞ノミネート歴のあるフォトグラファーのグレッグ・カーン氏だ。同氏の作品「3Millimeters(3 ミリメーター)」は、メリーランド州イースタンショアの海面上昇をテーマに、人や生き物などの生態系全体が、海面上昇により、ゆっくりと溺れていく様子を描写している。

満潮時には海水が道路に流れ込む。米メリーランド州イースタンショアは世界平均の2倍、海面上昇が起きている©Greg Kahn/ Getty Images Climate Visuals Grant Recipient
海面上昇は森の生態系も壊している©Greg Kahn/ Getty Images Climate Visuals Grant Recipient
メリーランド州スミス島で遊ぶ7歳の女の子©Greg Kahn/ Getty Images Climate Visuals Grant Recipient

「この問題を記録し始めた頃、住民の多くは科学的データを信用していなかった。しかし時間の経過とともに、懐疑的だった住民たちが気候変動の問題に気付き始めたように感じる。だからこそ、今この仕事を続けることの重要性が増していると思う」(グレッグ・カーン氏)

特別賞には、アラスカ出身のフォトジャーナリスト、アカシア・ジョンソン氏の「オープンウォーターの季節:氷のない北極に適応するイヌイットの人々」が選ばれた。北極一帯の海氷融解と、長期化するオープンウォーターの季節に適応しなければならなくなったイヌイットの社会を伝える作品だ。

ゲッティイメージズは、ゲッティイメージズ・クライメイト・ビジュアルズ奨励金以外にもさまざま奨励金制度を展開し、これまでに世界中のフォトグラファーやビデオグラファーに160万ドル(約1.7億円)を贈呈している。

ゲッティイメージズ グローバルコンテンツ部門シニアバイスプレジデントのケン・マイナルディス氏は、「ビジュアルコンテンツには、気候変動などの危機的な問題を世界に伝え、人々の意識を変容させる力がある。受賞者の作品は、クオリティだけでなく、そのビジョンや、気候変動をビジュアルで伝える意欲や姿勢にも感動した」とコメントしている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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