書評『海耕記:原耕が鰹群に翔けた夢』

■『海耕記:原耕が鰹群に翔けた夢』(福田忠弘著、筑波書房)

主人公は原耕(はらこう)。戦前、南洋で鰹魚場を開拓した先駆者。インドネシア・アンボン島に製氷、鰹節加工、魚粉・缶詰製造をもつ漁業基地の構想を掲げ邁進、道半ばアンボンで尽きた。

薩摩半島の鉄道整備、草垣島灯台(大隅海峡の航路認識)建設にも貢献。医師であり政治家。何よりも生粋の船人(漁師)、起業家。あまり知られないが、地方発で社会を生き抜く構想力を持ち情熱的に生きる者がいた。

本書は、南日本新聞の同名の連載を書籍化した伝記。生から死の瞬間までの足跡やエピソードを余すことなく追うので、耕(著者は敬意と親しみを込めてそう呼ぶ)の生きた軌跡が立体的に広がる。もちろん彼の生き方によるが、膨大な文献や映像から丹念に記述、陰影巧みに表現する著者の力量にもよる。

立体的。それは空間。鹿児島、東京、南洋。耕の原点、鹿児島のコミュニティ空間を中心に、地方から中央に、地方からアジアに活動範囲は同心円状に広がる。鰹を追い耕はその空間を往来する。耕の究極的な事業構想は、鮮度を保ち帰港(寄港)して供給する従来の鮮魚供給型漁業ではない。

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キーワード: #SDGs

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