書評『海耕記:原耕が鰹群に翔けた夢』

しかし、である。少なくとも構想そのものは、鹿児島の鰹産業の今や将来の衰退を打開すべく先見性をもったバックキャスティング思考だ。ここからしか出てこない構想。海外漁業基地による輸出商品型漁業があるべき姿なのだ。

国境を越えた活動のダイナミズム、閉塞感を打破する事業構想の事例として、本書は示唆に富む。また、海難事故の遺族の辛く苦しい鰹節行商の生活。台風により遭難した船の持ち主である父の苦悩。

これらが耕を突き動かした原体験だとしたら、それがどのように事業構想に昇華していったのか。興味は尽きない。SDGs(持続可能な開発目標)実践に関心を持つ者にお薦めの一冊だ。

文・甲賀聖士 昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員

1990年明治学院大学国際学部卒。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科、早稲田大学大学院社会科学研究科に学ぶ。国際政治学修士。専門は平和研究・人間の安全保障研究。企業やそこで働く人々、女性もグローバル社会の重要なアクターと捉え、その行動が平和や社会的価値の創出に貢献する可能性を探る。主な論文に「平和の探求―平和の発展と浸透の視点から」、「性役割意識と社会貢献意識を結ぶ『媒介意識』の仮説検証 ―就労前の女子大学生における2つの意識の関係性分析―」等。日系企業で事業管理、安全保障輸出管理、J-SOX、CSR等にも従事。

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キーワード: #SDGs

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