「ネオニコ問題は決して解決していない」③

【2013年度:2013年8月13日~2014年2月28日(199日)石川県志賀町 極低レベルでのネオニコと有機リンの蜂群への影響】[4]

蜂群に投与するための糖液中にカメムシを駆除するための推奨濃度の1/500の濃度となるように各種農薬濃度を調整して、長期野外実験を行った(ジノテフランDF: 0.2ppm;クロチアニジンCN: 0.08ppm;フェニトロチオンFT: 1ppm;マラチオンMT: 1ppm)。この実験において、全ての蜂群の女王の健在が越冬直前に確認されていたが、ネオニコ(DF,CN)投与群は越冬後まもなく滅亡した。

ネオニコ投与群の滅亡を確認して約1か月後無農薬群(CR)とMT(有機リン)投与群が、約2か月後にはFT(有機リン)投与群が滅亡した。この無農薬群および有機リン投与群の滅亡は越冬中に行った実験による蜂球の崩壊が原因ではないかと推測している。

即ち、ネオニコは蜂群を高確率で崩壊させるが、有機リンは低い。滅亡した蜂群に残されたハチミツ中の農薬濃度を測定したところ、ネオニコ投与群では投与濃度の約1/3~1/6に薄められて蓄えられていたが、越冬前に十分な量の農薬を摂取した有機リン投与群の残存ハチミツ中からは検出されなかった。

ネオニコの残効性、巣箱内という環境や貯蜜期間などを考えるとネオニコの分解はほとんど起こらず、貯蜜中の農薬濃度の減少は周りの無農薬栽培からの花蜜により薄められたと推定した。

また、有機リン投与群の残存ハチミツから農薬が検知されなかったのは、有機リンが貯蜜中に蓄えられなかったのではなく、残効性が短いために貯蔵中に分解したと推定した。

[3] Toshiro Yamada, Yasuhiro Yamada, Kazuko Yamada: Journal of Biological Series, 1(3):108-137 (2018).
https://www.academiapublishing.org/journals/jbs/abstract/2018/Jul/Yamada%20et%20al.htm
[4] Toshiro Yamada, Yasuhiro Yamada, Kazuko Yamada: Journal of Biological Series, 1(4):187–207 (2018).
https://www.academiapublishing.org/journals/jbs/abstract/2018/Oct/Yamada%20et%20al.htm

「ネオニコ問題は決して解決していない」④に続く

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山田 敏郎(金沢大学名誉教授・学術博士)

金沢大学大学院工学研究科修士課程修了。 東洋紡績㈱犬山工場勤務を経て1988年より同社総合研究所主席研究員。2014年よりプラスチック成形加工学会に論文編集委員として所属。現在、金沢大学名誉教授・学術博士。専門は化学工学、養蜂。

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