3頭のゾウとSDGsの話

編集長コラム

今日は「ゾウとSDGs」の話です。

といっても、「野生のアフリカゾウは、この100年で3%にまで減少した」とか「象牙の取引が禁止されたのにも関わらず、まだ売られている」というリアルの話ではなく(それはそれで重要ですが)、「架空のゾウ」の話です。

「1頭目」は、世界銀行の主任エコノミストを20年間務めた経済学者のブランコ・ミラノヴィッチ・ニューヨーク市立大学大学院客員教授が2012年に発表した「エレファント・カーブ」のゾウです。(オルタナ編集長=森 摂)

ミラノヴィッチ氏のエレファント・カーブ オルタナ森作成 

このグラフでは、1988年から2008年までの20年間で、先進国の高所得者層(A)と、中国など新興国の中間層の所得(B)が急増した一方で、先進国の中所得者層(C)は減っていることを表したものです。

(A)が高く上げたゾウの鼻を、(B)がゾウの背中を、そして(C)はゾウの口元に見えるため、「エレファント・カーブ」の名前が付きました。

この20年間、日本や米国、欧州の中間層はほとんど伸びなかったのです。これが米国社会の分断や、英国のEU離脱を招きました。日本でも所得格差の問題が年ごとに問題になっています。

所得格差の問題は、グローバル化の波を受けた新興国にも及びます。特にコーヒーやカカオ、バナナ、パーム油、ゴムなど熱帯で採れる農作物の収穫従事で、児童労働や強制労働が指摘されていました。エレファント・カーブに記述はありませんが、さしずめ、ダラリと下がったゾウの尻尾でしょう。

こうした状況は看過できないとして、国連のコフィ・アナン事務総長(当時)が1999年1月、世界経済フォーラム(ダボス会議)で、SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)を提案したのです。MDGsは2000年に始動し、2015年を目標年にしました。その後継がSDGsなのです。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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キーワード: #SDGs

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