国産の木質チップ利用の目的は除染?
日本のバイオマス発電所の燃料は、現在25%が国産の木質チップだ。国産の木質チップ利用も微増傾向にある。
増加の背景には、燃やしてもカーボンニュートラルだからCO2の排出量はカウントされないという輸入バイオマスと共通の理由もあるが、国産材を使用する発電所の場合、規模がそれほど大きくないため環境アセスメントの対象外で、住宅地の近くでも建設しやすいということもあるようだ。
この発電所をめぐり、各地で地元住民の反対運動が活発化している。それら地域に共通するのは、地元住民にはほとんど説明がなされないまま建設が進められることだ。
そのため、前もって詳しい説明がないのは、放射能で汚染された森林の「除染」目的の発電だからではないかと疑われている。
このうち、前橋バイオマス発電所(群馬・前橋市)と田村バイオマス発電所(福島・田村市)は、住民訴訟に発展した。
前者は、周辺地域の放射能汚染への懸念や夜間騒音に悩む住民らが、2016年に群馬県を相手取り提訴した。県が排出ガス量の計算方法を変更したため、同発電所は環境アセスメントの対象外となり、住民の不信を招いたことも、住民側が訴訟に踏み切った理由の1つだ。現在、最高裁で争われている。
後者は、現在福島地裁で係争中だ。放射性物質を除去するというHEPAフィルターの偽装疑惑も持ち上がる中、発電所では最近、試験焼却が始まった。
バイオマス利用は「環境にやさしい」というイメージがある。しかし、少なくとも発電所で燃やしてしまう場合、本当にエコか疑わしいケースも多いようだ。