新型コロナで日本の「寄付」はどう変わったのか

――男女比ではどちらが多いのでしょうか。

何度統計を取っても、寄付は女性が多いので今回も女性が多いのではないでしょうか。

―前回の寄付白書での男女比はどれくらいでしたか。

「女性53%対男性47%」です。差が5―10%程度で、ほんのわずか女性の比率が上回っています。

日本ファンドレイジング協会は、12月を寄付月間として寄付を呼び掛ける

―12月は「寄付月間」です。新しい動きはありますか。

2015年から開催している「寄付月間」は、今年も開催する予定です。毎回、サブタイトルとして「欲しい未来へ、寄付を送ろう。」を掲げています。今までは、子どもの貧困なら子どもの貧困、環境なら環境など、「欲しい未来」に対しての寄付を呼びかけていました。

しかし、コロナが社会構造を変えるなかで、私たちは何を「欲しい未来」とするのかを考えることが必要だと考えました。

未曽有の状況をどのように克服して行けるのかを一緒に考えたり、対話をしたりするオンラインでのイベントも増えて、170前後の企画が全国各地で行われています。

――全国のイベントを知るにはどこのウェブサイトを見ればよいのですか。

寄付月間のサイトをご覧いただきたいです。今年は全国どこからでも参加可能な企画が多いのが印象的でした。

――寄付月間は海外にもあるですか。

寄付月間は日本独自のものですが、「ギビングチューズデー」(感謝祭の次の火曜日)を「寄付の日」として、世界的なムーブメントになっています。

日本では寄付自体が黎明期ですので、30日やって30倍のインパクトを生むということを目指して「月間」にしたという経緯がありました。今年で2015年から初めて、6回目になります。

寄付月間は啓発キャンペーンなので寄付月間として募金を集めるわけではなく、いろいろな組織や個人が主体となってイベントを開催し、一人でも多くの方にイベントに参加してもらう取り組みを各自行うということになっています。

――最近では、「企業の社会的責任は本業を通じて果たす」「寄付は余剰利益から出すもの」という考え方が強まったように思います。日本のNGO/NPOは法人からの寄付に頼っている面もあります。寄付は減らさないでほしいのです。

おっしゃる通りで、企業が本業のスキルや技術力を生かして社会課題に取り組むことを考えることは重要な軸です。しかし、国連もSDGsの達成には民間の資金が必要だと明示しています。

寄付とか社会課題解決のために資金を提供することで、多様な主体が新しいイノベーションを生み出していく文化を社会全体で作っていくことに重要性があると思います。

寄付だけでなくてさらに技術的なサポートをしていく、例えば社員によるプロボノなど、一つの正解というよりは多様な主体が多様なチャレンジをしていくエコシステムを社会に作っていくことが重要だと考えます。

――「社会インパクト」という言葉や「インパクト投資」という言葉もよく聞きます。寄付をする側、される側とも強く意識するようになりました。

阪神淡路大震災は130万人がボランティアに参加した「ボランティア元年」でした。東日本大震災は76.8%の方が寄付をした「寄付元年」でした。そして今回は「選択する寄付元年」だと思います。

というのは、義援金のようなものがなかったので、クラウドファンディングのサイトを見ながら、医者を支援するのか、あるいはアーティストや居酒屋なのかを自分で選択しなければならなかったからです。

私たちが社会的な共通経験をし、寄付文化が育つうえで、寄付先を選択することに慣れている寄付者は必要だと考えます。どういう軸で選ぶのかを考えるときに、心が動いたからという感情的な右脳系もいれば、変化を起こすプロセスを考える論理的な左脳系で腑に落ちる人もいます。

自分で選択することを促すために、社会問題解決のプロセスでどんな変化が生まれているかを説明しようという欲求が今まで以上に高まってきています。日本では起こらなかったのですが、欧米ではリーマンショック後に、インパクト評価(成果評価)が進んだという事実があります。日本でも情報に対する欲求が増すのではないかと考えています。

           ◆

鵜尾 雅隆(うお・まさたか)日本ファンドレイジング協会理事長。同協会は毎年9月にイベント「ファンドレイジング日本」を開催。今年は初めてオンラインで開催し、1550人が参加。同協会による「認定ファンドレイザー」の累計取得者は約1500人、資格取得に向けた研修プログラムには累計5000人が参加した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #寄付

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