なぜ鶏卵業界は動物福祉を恐れるのか

吉川貴盛氏と西川公也氏という二人の元農水大臣が鶏卵生産業者大手から現金を受け取っていた問題で、現金受け渡しの趣旨が、日本の養鶏業界にアニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方を導入しないでほしいという要請だったことが明らかになった。なぜ、日本の鶏卵生産業界は、アニマルウェルフェアを恐れるのか。オルタナ本誌59号(2019年12月発売)に掲載した、認定NPO法人アニマルライツセンター(東京・渋谷)の岡田千尋代表理事の寄稿を再掲する。

畜産動物へのあまりにひどい扱いが問題となった1964年から、欧州を中心にずっと積み上げられてきた畜産動物のアニマルウェルフェアの議論が、50年経った今、企業を大きく変容させている。

代表的なものが、自社で取り扱うすべての卵を平飼いか放牧のものに2025年などの目標時期を定めて切り替える「ケージフリー宣言」。ファストフード店、スーパーマーケット、加工食品企業やレストランなど、食品を扱う1700社以上の企業がこのケージフリー宣言をしている。

15年前頃から徐々に始まり、この数年で急加速し、アジア、アフリカ、南米などの企業にも広がっている。台湾のカルフールや、日本と中国を除くアジアのサブウェイ、韓国の鶏卵市場の12%を占める企業もケージフリー宣言をした。日本でも外資系企業を中心に複数の企業が含まれる。

薬剤耐性菌の問題も

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岡田 千尋(NPO法人アニマルライツセンター代表理事/オルタナ客員論説委員)

NPO法人アニマルライツセンター代表理事・日本エシカル推進協議会理事。2001年からアニマルライツセンターで調査、戦略立案などを担い、2003年から代表理事を務める。主に畜産動物のアニマルウェルフェア向上や動物性の食品や動物性の衣類素材の削減、ヴィーガンやエシカル消費の普及に取り組んでいる。【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス

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