「緊急事態宣言発令後、一時は売上が3分の1ほどに落ち込んだ時期もあった」という渡辺さん。食堂運営を継続させるため、暫定的ではあるがテイクアウトも開始した。それまでは週末は土曜日のみスナック的な店を運営していたが、これも三密を避けづらいということで中止せざるを得なくなった。

そんな状況を打開するために、昨年7月に始めたのが「いつか鎌倉に店を出したい」という地元の飲食業者向けの「週末の食堂間貸しビジネス」だ。ポップアップやケータリングで資金を集めて開店準備を進めている飲食業者に対し、1日単位で間貸しをする。出店者は事前に顧客作りができ、「まちの社員食堂」は家賃負担を減らすことができているという。

当初は希望日をスポット的に貸す予定だったというが、「結果的には同じ方が長期間借りてくださった」と話す。昨夏から3ヵ月以上、まちの社員食堂でフレンチをベースにした多国籍料理を提供していた「y23(イグレックトゥエンティースリー)」の深野シェフは、期間終了に際して「経験、気づき、見直し、これからを更に考えさせていただく貴重な経験になりました」と同食堂のインスタグラムへメッセージを寄せている。「まちの社員食堂」での出店が有意義だったことの現れだ。渡辺さんによれば、「y23」にはこの期間でリピートするファンもついたという。

「まちの社員食堂」の運営にはいま、全国から注目が集まっており、オフィスビル内で共同の社食作りを検討する企業や、街の個性を生かしたい自治体からの視察やタイアップのオファーが絶えないという。コロナ禍で当初描いた形とは異なる形になっているが、鎌倉というコミュニティーの中で、そこで働く人たちをコネクトする役割を果たし続けている「まちの社員食堂」から学べることは多い。

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