キッチンから始まる、持続可能性への思い

世界では、まだ食べられるのに廃棄される食品ロスが年間13億トンにも上り、生産された食糧の3分の1が廃棄されているという。SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」でも、「世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減し、生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させること」が目標に掲げられている。

農林水産省の発表(2019年)によると、日本でも年間612万㌧の食品ロスが発生し、そのうち284万トンは家庭から排出されている。

家庭での食品ロスには、食材の買いすぎで腐らせてしまう「直接破棄」や、調理時における皮や芯などの「過剰除去」、作りすぎによる「食べ残し」などがある。

そこでABCクッキングスタジオは料理教室運営のノウハウを活かし、食品ロスへの関心を高めるきっかけをつくろうと食品ロス削減を目的とした「SDGsアクション!かぼちゃの使い切りレッスン~食品ロスを減らそう~」を開発した。コロナの影響もあったが、全国でこれまでにのべ3500人以上が参加した。

「料理をするだけで貢献できることは意外に多い。野菜を丸ごと使って食品ロスを減らすこともできるし、過剰な容器包装を減らすことにもつながる。レッスンや会報誌、SNSなどを通じて、身近な取り組みを積極的に発信していきたい」(同社広報ブランド戦略部の中谷美緒さん)

台所とボルネオ、洗剤でつながる

手肌にやさしく、環境にも配慮していることから、全国のスタジオでは「ヤシノミ洗剤」を採用

ABCクッキングスタジオでは、食品ロスだけではなく、環境配慮型製品の導入など、SDGsに貢献する取り組みを展開している。そのパートナーの1社がサラヤ(大阪市)だ。

クッキングスタジオでは手や調理器具を洗うのに洗剤を使うが、20年ほど前からサラヤの「ヤシノミ洗剤」やハンドソープ、消毒剤を全国のスタジオで採用している。

「毎日たくさん使うものなので、手肌にやさしいものを探していたところ、ヤシノミ洗剤に出合った。原料調達から製品、そして排水に至る全行程において環境や人権に配慮していることも決め手になった」

同社法人グループゼネラルマネージャーの渡部菜採さんは、経緯を語る。渡部さんは2016年、サラヤの案内で、スタジオの先生らとともに植物原料の一つであるパーム油の生産地ボルネオを視察した。

「初めて野生のゾウやオランウータンを見て、とても感動した。一方で、パーム油のプランテーション開発で、住みかを奪われ、保護されたゾウの姿には胸を痛めた」と振り返る。

生物多様性の宝庫であるボルネオだが、パーム油を生産するためのアブラヤシプランテーションの拡大によって多くの動植物が絶滅の危機に瀕している。

この現状を知ったサラヤは2004年、ボルネオの生物多様性保全プロジェクトを開始。持続可能なパーム油の調達を進めるとともに、ヤシノミ洗剤をはじめとした商品の売り上げの1%が寄付になる仕組みを構築した。

「現地を視察して、私たちが毎日何気なく使っている洗剤が、ボルネオの自然や野生生物を傷つけていることを知る一方、ヤシノミ洗剤のように保全につながる洗剤があるということを改めて実感した。スタジオの先生に、ボルネオの現状について語ってもらうことで、生徒さまにも伝わりやすくなる。共感の輪を広げ、行動するきっかけづくりを進めていきたい」(渡部さん)

SDGsのゴールである2030年まであと10年。パートナーシップ(協働)を進め、ゴール達成に向けて社会全体で取り組むことが求められている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #SDGs

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