WWFジャパンが「ワンヘルス」を提唱している。ワンヘルスとは、人・動物・生態系の健康を1つととらえ、各々がバランスよく健全であるべきという考え方で、コロナ禍の今だからこそ、次のパンデミックを予防するカギといわれる。国際機関や専門家、行政とともに2月中旬に開いたオンラインシンポでは、ワンヘルス早期実現を求めた「共同宣言」を紹介。共同宣言には7400人近くから賛同を得ている。(クローディアー真理)
WWFジャパンが1月下旬から2月下旬にかけて「ワンヘルスで守ろう、私の大切なもの~次のパンデミックを防ぐために、私たちができること~」キャンペーンを実施した。その一環として、オンラインシンポジウムが開かれた。
次の感染症蔓延を防ぐためのワンヘルス
第1部の4講演のうちの1つ、長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授は、「Withコロナ時代の見取り図」と題した講演を行った。コロナは感染者1人から多数に感染しており、もはや根絶することができない可能性があることを踏まえ、今後どのようにウイルスと向き合っていくかを中心に話は展開した。
現状をウイルスの目から見てみると、人間とは違う風景が見えてくるという。ウイルスは宿主がいなくては生きられないため、宿主との敵対関係を望まず、むしろ宿主の生存可能性を伸ばそうとする方向に進化するのではないかという。
ヒトの体内には多くの微生物が常在している、私たちは微生物と共に生きているというわけだ。ウイルスも微生物の1つ。かく乱されるなど宿主と共に生きられなくなると、微生物は肥満や糖尿病、自閉症、アレルギーなどを引き起こす。
こうした病気に対処するために、「悪い微生物をやっつける」方向に社会は向かう。抗生物質などを使い、微生物を除去する方向に動くが、今度は微生物が不在になることで、別の病気を引き起こすこともある。
そこで、山本教授は「21世紀の公衆衛生学的課題は、「共生」という概念を中心に置いた、新たな感染症対策の構築を必要とする」と言う。
山極壽一・京都大学名誉教授も 「エボラ出血熱感染症が、ゴリラそして人間に広まった原因は熱帯雨林の破壊だったことは、今後の人間社会のあり方を考える上でいいヒントになる」と指摘する。